ASCII
「1880円20GB」格安の意地見せたIIJmio
窮地に追い込まれたMVNOが意地を見せている。
3キャリアが相次いで月額3000円以下のオンライン専用プランを発表する中、存在感が薄くなりつつあった格安スマホを展開するMVNOが、ここに来て、相次いで料金プランを改定してきた。MVNOと3キャリアとの料金差が一気に縮んだことになるが、なんとか巻き返しを図ってきたのだ。
たとえば、日本通信が他社に先駆けて20GBを1980円(税抜き・以下同)で提供したことで、mineoやJ:COM MOBILEも1980円で追随した。1回5分までのかけ放題がつくahamoと比べて1000円、かけ放題のないpovoやLINEMOに比べれば500円の差となっている。
さらに踏ん張りを見せたのがIIJmioだ。
20GBに関しては1880円と、他のMVNOよりも100円安い。
さらに他社を圧倒したのが低容量のプランだ。2GBで780円、4GBで980円、8GBで1380円は、相当攻めた料金設定だ。実際にmineoでは1GBで1180円、5GBで1380円だから、金額的、容量的に他社と比べてもインパクトがある。
「IIJ、ちょっと安すぎはしないか」という疑問がわくが、IIJ MVNO事業部、亀井正浩コンシューマーサービス部長は、「MNOが提示してくる新たな接続料を見てからプランを検討していては遅くなると判断した。我々でデータ接続料や音声卸料金を予想して今回の料金を設定した」と語る。
●接続料の低廉化見込んだ料金設計
MVNOはMNOから回線を借りる際、接続料を支払う。総務省ではMVNOが今後も競争力のある料金プランを提供できるよう「アクション・プラン」を掲げており、2月中にもMNOからMVNOに対して新たな接続料が提示される計画であった。
しかし、接続料の提示を待ってから料金プランを策定していては、1年で最も契約が獲れるとされる「春商戦」には間に合わない。特に今年の春商戦は3キャリアが相次いでオンライン専用プランを投入する。4月1日には楽天モバイルも新料金プランがスタートし、1GB未満であれば0円で利用できるようになる。
IIJとしては、早いタイミングで新料金プランを発表することで、既存のIIJmioユーザーに「新しい料金プランは魅力的だからやめないでね」というメッセージを出すことを優先したというわけだ。
ただ、新たな接続料が提示されていない中での料金値下げということは、接続料の値下げ予想が外れた場合、収益が悪化する恐れもある。実際、IIJは過去に接続料の予想を外して収益が下がったこともあれば、想定以上に値下げされて、収益が上向いたこともある。
IIJ、矢吹重雄MVNO事業部長は「将来の予見性や研究会などの情報交換をした上で料金設定をしている」として、接続料は基本的には低廉化が見込まれており、中長期的に回収できる見込みを立てているという。
●MVNOの可能性は販路にもある
3キャリアがオンライン専用プランを投入してくる中、MVNOにとっては厳しい道になりそうではあるが、やり方次第によっては、これからも充分、存在感を出していけるのではないか。
ひとつ、可能性を感じているのが販路だ。
IIJmioの発表会ではビックカメラの担当者が挨拶をしていた。ビックカメラ店頭でIIJmioを扱うだけでなく、IIJと組んで「BIC SIM」として、ビックカメラブランドのSIMカードも手がけている。
IIJmioはビックカメラだけでなく、ソフマップ、コジマ、ヨドバシカメラといった店舗でも申し込み受付をしている。店頭で、専用スタッフに他社比較やサービス内容を確認しながら契約できるというのは、3キャリアのオンライン専用プランにはない魅力だ。
3キャリアのオンライン専用プランは、当然ながらネットのみの受付であり、いまのところはキャリアショップでの受付はない。仮にキャリアショップに相談に行こうものなら、「オンライン専用プランは面倒くさくて大変」という案内をされて、無制限プランや決してお得とはいえない小容量プランを契約させられることだろう。
「ていねいなサポートを受けたい」のであれば、キャリアショップで契約するのが一番だが、「できるだけ通信料金は安く、でも店頭で納得しながら契約したい」というのであれば、「MVNOを家電量販店で契約する」というのが得策だ。
またIIJmioでは、新料金プランでもデータ容量の家族シェアが可能となっている。お父さんは20GB、お母さんは2GB、子どもも2GBにしておき、合計24GBを家族で分け合って使うことが可能だ。家族でのデータシェアはNTTドコモが過去に導入していたが「わかりにくい」ということで辞めてしまった。「家族でうまいことシェアして、賢く使いたい」のであれば、IIJmioが選択肢となってくるというわけだ。
もちろん、1人で複数台のデバイスを使うというのもアリだろう。
●MVNOによる市場活性化を期待
武田良太総務大臣は、3キャリアのオンライン専用プランやアクション・プランの導入は「MVNOに一番、恩恵がある」としているが、どう考えてもMVNOに恩恵などなく、厳しい状況に置かれているのは間違いない。しかし、せっかく日本に根付き始めたMVNO、格安スマホの市場を潰してしまっては、将来的に3社の寡占に戻りかねない。
なんとしても、MVNOには踏ん張ってもらい、日本のモバイル市場での競争環境を意地し、活性化してもらいたいと願うばかりだ。