プレゼンテーション「ココカラとマツキヨが統合協議へ 共同記者会見で発表」

株式会社マツモトキヨシ_株式会社ココカラファイン / 消費

ココカラとマツキヨが統合協議へ 共同記者会見で発表

記者発表会の詳細を見る

東洋経済オンライン

ココカラ、マツキヨと統合選んだ「曖昧な判断」 売上高1兆円のドラッグストア誕生となるか

「これから生き残っていくのではなく、勝ち残っていくための道を模索するために、今回マツキヨを相手先として選んだ」。ココカラファインの塚本厚志社長は、8月22日に都内で行われた会見の席上で、このように語った。

ドラッグストア業界7位のココカラは8月14日、同5位のマツモトキヨシホールディングスと経営統合に向けて独占的に協議を開始する、と発表した。

「経営統合準備委員会」を設置し、両社で協議を進める。独占交渉権の期間は2020年1月末まで。経営統合が実現すると、両社合わせて売上高1兆円クラス、店舗数3000店規模のドラッグストアが誕生する。現在業界1位のツルハホールディングスは2018年度売上高が7824億円のため、新連合はこれを越え、業界トップに躍り出る試算になる。

紆余曲折だったここまでの道のり

「ココカラへのラブレターが、いつになったら返ってくるのか待っていた。無事に返ってきて、非常に満足している」。経営統合に向けた共同記者会見で、マツキヨの松本清雄社長は満足げに話した。

ここに至るまでは、紆余曲折の道のりがあった。4月26日にココカラは、マツキヨと資本業務提携に向けて検討することを発表した。ところがココカラは6月1日に、スギホールディングスとの経営統合協議を公表。すると6月5日には、今度はマツキヨとも経営統合に向けて協議すると、方向を転換した。

ココカラは経営統合の協議先を選ぶべく、外部経営者などで組織された特別委員会の設置を6月10日に発表した。その特別委員会の検討結果を踏まえ、今回の決定に至った。経営統合後の運営形態については、今後両社で話し合いを進めていく。屋号についても現段階では決まっていない。ただ、マツキヨが2013年に完全子会社化した「ぱぱす」のように、マツキヨとココカラの両ブランドともに屋号を変えずに共存していく可能性はある。

マツキヨを選んだ大きな理由として、ココカラの塚本社長は「マツキヨはとても優れたPB(プライベートブランド)の商品開発力がある。また、マーケティング力と店舗運営能力も高い。そのノウハウを使えば、大きな成果を上げられるだろう」と語る。

また、マツキヨは収益性の低かった地方子会社を立て直してきた経験がある。ここ数年間店舗ごとに人件費や経費などを細かく分析し、地方子会社の底上げを図ってきた。

ココカラも目下、収益力の低下に苦悩している。「マツキヨと一緒になればココカラの抱えている経営課題を解決することもできる」と、ココカラの塚本社長が語るように、マツキヨの収益の底上げ力に期待する部分も大きい。

抽象的だった塚本社長の答弁

一方で、ココカラはなぜ、スギを選ばなかったのか。この点について、塚本社長の答弁はあいまいだった。

「特別委員会でさまざまなシナジーを試算し積み上げていったうえで、どちらと組むのが当社の企業価値を最大化できるか答申をもらった。結果的にマツキヨのほうが効果を大きく見込めた」(塚本社長)。このような抽象的な答弁に終始し、マツキヨとスギを比べて、何がどう違ったのかを具体的に語ることはなかった。

業界関係者の間では、「ココカラはオーナー色が強いスギの経営姿勢を嫌ったのでは」との見方が大半だ。マツキヨはスギに比べると、創業家一族による株式の保有比率が少ない。マツキヨが創業家の松本一族および関連会社で1割の保有率に対し、スギは創業家の杉浦一族および関連会社で3割の保有率になる。

「マツキヨの清雄社長は表には出てこず、裏でじっくり考えるタイプ。実質的な部分は現場にまかせて、全体のコントロールをしている。自由度が比較的高いので、ココカラは経営統合後もやりやすいのでは」と、ドラッグストア関係会社のあるトップは話す。

そもそも、マツキヨとスギの両社に経営統合を提案したこともさることながら、特別委員会にその選択の判断を委ねたかのようなココカラの経営姿勢は、異例中の異例だ。

22日の会見では、記者から「経営判断を特別委員会に託したかのように映る。経営トップである社長が決めることなのではないか」との指摘があった。これに対し、ココカラの塚本社長は笑いながら、「特別委員会の意見を参考にして取締役会で決議したので、判断を委ねたわけではない」と反論した。

スギの社内からは落胆の声も

今回のココカラの判断に対して、スギの社内では「落胆の声が大きい」(スギの中堅社員)という。IR担当者は「2020年度を最終年度とする中期経営計画では、提携・M&Aによる成長も含め、8000億円の売上高を目指している(2018年度売上高4884億円)。今後も他社とのM&Aや提携を模索していきたい」と話す。

ドラッグストア再編の波は、これで終わりそうにはない。ドラッグストアは創業家によるオーナー経営が多いが、後継者問題を抱える会社も少なくない。

「後継者がいないドラッグストアは、今後何らかの決断が必要になってくるだろう」と、前出のドラッグストア関係会社トップは言う。収益が伸びなやむ地方ドラッグストアを巻き込んで、業界の再編機運が高まる可能性は十分にある。

ココカラ・マツキヨ連合の誕生は、業界全体が激変する「引き金」になるかもしれない。