プレゼンテーション「au新料金プラン発表会」

KDDI株式会社 / 技術

au新料金プラン発表会

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日本経済新聞

KDDI「次は失敗できない」 背水の携帯料金下げ

KDDIが意地を見せた。13日、主力「au」のデータ無制限や20ギガ(ギガは10億)バイトの新料金など3種類の値下げ策を公表。大手3社では最後発だっただけに、自由な課金機能などで特徴を出した。今後提供が始まる各社の新料金で、顧客がどれだけ動くか注目だ。

「また(割引条件などの注釈を意味する)※印がたくさんあるんじゃないか」。12日夜に報道でKDDIの割安な新料金が伝わると、SNSは疑念の声であふれた。同社は2020年12月に、複雑な割引ありきの料金表示が利用者の反感を買ったばかり。「今回も裏があるぞ」というのが世間の見方だった。

翌日に開かれた記者会見。「声をしっかり受け止め、改めて顧客視点でシンプルで分かりやすい料金を検討した」と、高橋誠社長による反省の弁とも取れる言葉から始まった。出したのは①20ギガで月2480円の新プラン、②格安ブランド「UQモバイル」の全プラン値下げ、③データ無制限の約1~2割値下げ、の3種類だ。

③は6580円でNTTドコモやソフトバンクと同水準だが、①と②は額面では3社で最安となった。②のUQは家族割引を廃止し、特に「3ギガで1480円」は格安スマホ勢を脅かす低価格だ。

特に注目を集めたのは①の、auのオンライン専用ブランド「povo(ポヴォ)」だった。「point of view(視点)」と、ラテン語で「卵から」「最初から」という意味の「ab ovo」を合わせた造語で「新たな視点による誕生と成長」(同社)。需要に合わせて1日や1週間単位で柔軟に課金できる設計で、「動画配信を見たいから今日だけ200円でデータ無制限にする」などが可能になる。

実は同プランは仮想移動体通信事業者(MVNO)として立ち上げることを計画していた。そのためにシンガポール企業と組み、20年11月にMVNOの新会社を設立。だが一転してKDDI本体から出すことにした。

理由はドコモの「アハモ」への対抗だ。「20ギガで2980円」を打ち出したアハモは、ドコモ本体から出る。KDDIの高橋社長は「アハモにどう差別化して立ち向かうか、社内が非常に盛り上がっている。NTTとどう戦っていくかが我々の歴史だ」と明かす。

ポヴォはアハモやソフトバンクの同容量よりも500円安いが、1回5分以内の通話かけ放題を含めると同じ2980円になる。消費者からは「結局は横並び」、「電話を外せるのはうれしい」と賛否が分かれた。利用状況は消費者によって異なるからだ。MM総研の横田英明常務は「自由度が高い点でポヴォは評価できる」とする。基本料金よりも選択肢で差別化していく時代になる。一方で15日午前の会見で武田良太総務相は「非常に紛らわしい発表。最安値と言いながら、他社と結局同じ値段というのは、もっとわかりやすい手法をしっかり考えていただきたい」と批判した。

「次は失敗できない」。年末年始、KDDI関係者の口々から聞いた言葉だ。背水の陣で挑んだ新料金はひとまず終えたが、消費者視点に立ったプラン作りは継続して求められる。今回の戦略は消費者にどう評価されるのか。来る春商戦でその答えが出る。