プレゼンテーション「ドコモ「アハモ」月2700円に値下げ」

株式会社NTTドコモ / 技術

ドコモ「アハモ」月2700円に値下げ

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日経ビジネス

2700円に値下げの「ahamo」、シンプルな料金は早くも前途多難

 NTTドコモはオンライン申し込み専用プラン「ahamo(アハモ)」について、2980円(税別、以下同)から2700円に値下げして、3月26日に提供を始めると発表した。KDDIとソフトバンクが音声通話定額を切り離して2480円としたのに対し、5分以内の音声通話込みで料金のシンプルさを維持する。一方で、ドコモのクレジットカードで通信料金を支払うとデータ容量が増える特典を追加。金融決済事業を強化する狙いだが、こうした施策が増えれば、条件の多い割引サービスが乱立する以前の状態に逆戻りしかねない。

 NTTドコモは、月20ギガ(ギガは10億)バイトで2980円(税別、以下同)としていたオンライン申し込み専用プラン「ahamo(アハモ)」を、5分以内の音声通話無料を維持したままで2700円に値下げし、3月26日に提供を開始すると発表した。

 政府の強い値下げ要請を受けて携帯大手が相次いで打ち出したオンライン申し込み専用プランでは、音声通話に対する考え方が各社で分かれた。KDDIは「KDDIのスマートフォンを使う20歳代以下のユーザーの6割は、月10分未満しか音声通話しない」(高橋誠社長)として、音声通話定額を含まず月2480円とした「povo(ポヴォ)」を3月23日から提供する。音声通話をよく使う利用者向けには、5分以内の通話が無料となるオプションサービスを「トッピング」として月500円で提供する(参考記事「KDDIが携帯最安プラン 収入増の期待込めた『トッピング』機能」)。

 ソフトバンクは当初、ドコモと同様に5分以内の通話料込みで月2980円で提供するとしていた。ただし「対話アプリ『LINE』の音声通話機能で十分。そもそも音声通話は使わないので外してほしいという声が多く寄せられた」(寺尾洋幸常務)ことから、KDDIと同じくオプションサービスとして切り離すことに方針転換。同じく月2480円の「LINEMO(ラインモ)」として3月17日に提供を開始する(参考記事「ソフトバンクは500円下げ、熱を帯びる新料金プランの駆け引き」)。

 これに対してドコモの鳥塚滋人営業本部長は「通話定額を分離したほうがいいのではという声もあったが、ドコモの利用状況を見ると、20歳代の利用者の9割が何らかの形で音声通話を利用している」と主張。社会人になると、病院の予約、公的機関への問い合わせなど音声通話を使わざるを得ないシーンがあると説明する。そこで、5分以内の通話無料は維持しつつ、280円下げて月2700円とすることを決めた。税込みでも月2970円と3000円を切る。

「1プラン」維持しつつも中身は複雑化

 鳥塚氏は「音声とデータ通信をセットにしたシンプルな1プランを保ちながら、より魅力的な価格で提供する」と話す。12月にアハモが発表された際、消費者から高い評価を受けた理由は安さだけではなかった。携帯業界ではこれまで、期間限定のキャンペーンや適用条件が複雑な割引サービスが常態化し、結局いくらで使えるのかが分かりにくくなっていた。アハモは条件付きの割引がなく、1プランと分かりやすい点が話題を呼んだ。

 ただ他社との対抗上、初志の貫徹は難しくなりつつある。当初はドコモの既存プランとは全く別の料金プランという前提から「家族割の対象回線数にカウントしない」としていたが、カウント対象にすると修正。また、アハモに切り替えても過去のドコモ回線の利用期間を引き継げると改めた。競争が激しくなるなか、まずは既存顧客を囲い込んで足元を固めようという意図が見える。実際、2月28日時点で160万に達した先行エントリーの半数以上は、すでにドコモを利用している顧客の申し込みという。

 さらに今回の発表では、通信料金をドコモのクレジットカード「dカードGOLD」で支払えば10%分のポイントを還元するうえ、9月からは月5ギガバイトのデータ容量を増量する特典を追加することを明らかにした。月25ギガバイトを、税込みでも実質2700円弱で利用できるようになる計算だ。ドコモとしては他社に料金面で対抗しつつ、力を入れている金融決済事業の利用者獲得につなげる狙いがある。ただ、こうした特典が増えれば、料金が再び複雑化していく懸念がある。

 ソフトバンクのラインモは、LINEアプリを使う際のデータ量を月間の使用量にカウントせず、無制限で使えることを他社にない売りとする。しかし詳細をよく見ると、「トーク」(メッセージやスタンプのやり取り)や音声通話、ビデオ通話はカウント対象外だが、「Live」(動画のライブ配信)を視聴した際のデータ量はカウントするという。各社はこれ以上の値下げを回避すべく、サービス面での差異化にかじを切る。しかし力を入れれば入れるほど、料金プランが分かりにくくなるジレンマを抱えている。

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