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日産、新型「キックス」発表会レポート。躍動感と静粛性を兼ね備えたパワフルSUV
日産自動車は6月24日、新型SUV「キックス」のオンライン発表会を実施した。
まずは放映が開始されたTVCMが流され、続いて横浜市にある本社ギャラリーに日産自動車 副社長の星野朝子氏が登場。あいさつの中で「未だ新型コロナウイルスの影響が残るとはいえ、経済の回復を目指し市場を活性化するのも社会の一員として日産の使命でもある。Withコロナ時代に合ったさまざまなニューノーマルが確立していく中で、日産自動車としても既成概念に捕らわれず、あらゆる領域で今までにない取り組みを行なっていきたい」と決意を述べた。
その言葉にあるように、今回のキックス オンライン発表会は「横浜本社ギャラリー」「日産グローバルデザインセンター」「日産先進技術開発センター」と、日産の3つの拠点を生中継でつなぎながら、従来の発表会では伝えきれなかった魅力を伝えることに挑戦した。
また、先日発表された日産の4か年事業構造改革「NISSAN NEXT」についても改めて語り、日本を重要なコア市場とし、電動化と自動運転技術を強力に推進していくことで、2023年までに新たにEV(電気自動車)を2車種、e-POWER搭載車を4車種投入することで、ラインアップを拡充し、日本の市場をけん引していくと事業の方向性を語った。
そしてその先陣を切るキックスは、日産独自のパワートレインである「e-POWER」と運転支援技術「プロパイロット」を搭載し、日本市場において“10年ぶりのブランニューモデル”となり、世界中で人気のセグメントであるコンパクトSUV市場へ満を持しての投入となる。
星野氏は「このままで、終われるか。超えてやろうじゃないか。あるはずだった未来を。」と、キックスのキャッチコピーを力強く読み上げ、日本中へ元気を勇気を届けたいとあいさつを締めくくった。
続いて、神奈川県厚木市にある日産グローバルデザインセンターへと映像が切り替わり、デザイン責任者であるグローバルデザイン本部 プログラムデザインディレクター 入江真一氏が登場。入江氏は「今回は特別に、普段は外部の人間はめったに入ることのできないリアルなデザインの現場から、ライブ映像でキックスe-POWERのデザインの魅力を紹介します」と宣言。
すると壁一面の大きなスクリーンの中に4台のキックスが登場。キックスは、使い勝手のよい大きさ、躍動感のある外観、室内の快適性を確保したデザインが特徴となり、設定されるカラーは13色。
その中でも代表的なのが、オレンジ×ブラックの2トーンと爽やかなイエロー。この2色は躍動感あふれる若々しいダイナミックなe-POWERのパフォーマンスを表現。また、レッド×ブラックとホワイト×ブラックの2トーンは、静粛性をイメージし、コンパクトでありながらもひとつ上のクラスを感じられるプレミアム感を演出しているという。
外観の最大の魅力はフロントマスク。日本人が親しみを感じられるように「ダイナミックさ」と「プレミアム感」の2つが表現され、さらに全グレードLED薄型ヘッドライトを採用し、静観さとインテリジェントさを両立するハンサムな顔に仕上げられている。
さらに日産の特長のひとつといえる“Vモーション”のメッキグリルを「W」へと進化させ、豊かな面表現がコンパクトでありながら、プレミアム感を兼ね添えた外観になっている。手の込んだグリルパターンは日本の伝統工芸の組木からインスパイアされ、日本の風景に溶け込むデザインにしたという。
また、リアビューのスタイルのよさも言及。ワイドなバンパーと突出したリアフェンダーがダイナミックなシルエットを作り、タイヤの踏ん張り感によるカッコよさを感じてほしいという。LEDリアコンビネーションランプのインナーレンズには、切子細工のような細かいパターンをグラデーション加工し、点灯時には宝石のようなキラキラと光輝く演出が施される。
内装の紹介は入江氏がVRヘッドディスプレイをかぶり、視聴者も入江氏と同じ視点で見るという新たな試み。車内の映像が映し出されると、まるで自分が直接見ているかのようなリアルな映像が映し出された。
コンパクトカーでありながら、快適性とプレミアム感を兼ね備えた空間作りを心掛けたという室内。インストルメントパネルは、外に向かっていく広がりと、ステッチが施された合皮のラッピングにより、開放的で高級感のあるデザインに仕上げられている。また、本革シートにも同様のステッチが施される。
キックス専用の電気信号式シフトレバーは、電動化と自分で操縦している感覚を味わえるハイブリッドなデザインとし、パーキングブレーキも電動化したことで、しっかりとしたセンターアームレストが装備でき、快適な運転を約束してくれるという。
内装色はハイコントラストによりプレミアム感のある「タンカラー×ブラック」と、e-POWERの静粛性とシックで大人の雰囲気を感じられる「ブラック」単色が設定される。VRシステムではボタンひとつで内装色を変更でき、開発陣も簡単に検証できることが紹介された。
最後に入江氏は「キックスe-POWERは、日本のユーザーに本当に最適なクルマに仕上がったと自負している」と、スタッフ総員の想いを語ってくれた。また、入江氏が一番こだわったポイントは「若々しく躍動的でありながら、ひとつ上のクルマを所有する喜びを感じられるようなデザインに仕上げられた点」とコメントしてくれた。
キックスには、最新のe-POWERが搭載されているとのことで、映像は同じく厚木市にある日産先進技術開発センターに切り替わって、車両開発責任者である山本陽一氏が、生中継での説明となった。
山本氏は、これまでにさまざまなSUVの開発に携わってきたとのことで、その知見をフルに生かしキックスの開発に挑んできたという。開発ポイントは大きく3つあり「進化したe-POWERによる力強い加速」「高い静粛性」「快適な室内空間とラゲージスペース」となる。
e-POWERはエンジンを発電専用として、100%モーターで駆動する日産ならではのユニークなパワートレインで、モーター駆動ならではの力強いレスポンス、力強い加速、静粛性や滑らかな加速、電気自動車同様の楽しい走りを提供するという。
また、ここではSUPER GT日産系チームのエグゼクティブアドバイザーで、現役レーシングドライバーであるミハエル・クルム選手に実際に試乗してもらった模様をビデオで流した。
ミハエル・クルム選手がチェックしたのは、0-100㎞/hの加速、走行中の追い越しの加速とレスポンス。さらに操作性に関しては、同じコースで「N(ノーマル)モード」と「S(スマート)モード」の2つを比較。Sモードでは、アクセルオフにすると減速してくれるので、片足操作だけで運転ができて便利だと評価。
続いて静粛性。50㎞/h走行時に「とても静かですね」とクルム氏が言うと、開発の山本氏が「これはエンジンの作動頻度を下げたことで、なるべくバッテリーで走る時間を長くした結果です」と解説。
さらにワインディングロードのような高速ハンドリングをパイロンを並べた広場でチェック。街中と同様にNモードとSモードで比較したところ、Nモードはペダル操作が忙しい。Sモードならワンペダルだからもっと楽しいと、Sモードの楽しさを再び評価。
キックスのe-POWERはこれまでのより出力を大幅に向上したことで、レスポンスよく、力強く、なめらかに加速できるのが魅力。さらに低速ではエンジンをなるべく始動しないように制御していて、とても静かにEV走行を楽しめるようになったとした。
最後にクルム選手の目線カメラでの走行。クルム選手は「フロントウインドウが大きく開放感があり、全体的に何も視界を遮らないので楽しくて、落ち着いて運転ができる。遠くが見えるのは大事なこと。大きなポイントです」と感想を述べている。また、身長183cm超えのクルム選手が後部席に座ってみると、しっかり頭上に隙間があり、膝の前にも余裕があり、ゆったりと快適で気持ちがいいと好評。
リアのラゲッジスペースは、後部席が広い分狭いと思っていたのに、予想以上に広いとクルム選手も驚いた様子。さらに大人4人分のスーツケースを実際にラゲッジスペースに収める作業を自ら行ない、荷室の広さを確認していた。
また山本氏は、キックスには先進の運転支援が多数搭載されていることで、毎日の運転から遠出まで幅広いシーンでドライバーをアシスタントすることをアピール。
そして、オンライン発表会の最後は、星野氏が本社ギャラリー前でイエローのキックスをSモード(ワンペダル)で試乗。実際にスムーズで安定した走りを体験、披露して「SUVとe-POWERの融合をぜひご体感ください」と締めくくった。
なおキックスは、すでに予約を受け付けているが、発売は6月30日となる。価格については日産、新型SUV「キックス」発表。価格275万9900円からをご参照いただきたい。