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トヨタ、2021年3月期の第2四半期決算を発表。通期見通しを大幅に上方修正
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は11月6日、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)第2四半期決算説明会をオンライン中継で実施。2020年4月から9月の連結販売台数は3,086千台、同営業利益は5,199億円と発表した。前年同期を下回ったものの、営業利益で黒字を確保し、足元の販売台数は昨年の水準まで回復しつつあるとし、今年5月に発表した通期見通しの上方修正を行った。
また、豊田章男社長は決算発表後の会見で、Woven Cityプロジェクトの最新状況や、テスラの存在を踏まえたEV戦略についても言及した。
トヨタが発表した6カ月累計の連結販売台数3,086千台は、前年同期の4,657千台と比較すると66.3%という数字だ。
続いて、営業収益は11兆3,752億円(前年同期比39,830億円マイナス)、営業利益は5,199億円(同8,792億円マイナス)と発表した。原価改善や諸経費の低減など増加要因もあったものの、「販売面の影響(同9,700億円マイナス)」が減少要因の大半を占め、コロナ禍の影響が大きく反映された結果となった。
その一方で、第2四半期の3カ月(7~9月)における決算では、営業利益は5,060億円(同1,525億円マイナス)を計上。6カ月通期の営業利益の大半をこの3カ月で上げた。
当初発表していた2021年3月期の期首予想では、年間で営業利益5,000億円を見込んでいたが、この半年でその予想を既に達成したことになる。そのため、トヨタは年間の業績予想を大幅に上方修正し、1兆3,000億円の営業利益へと見通しを改めた。
決算説明会に登壇した執行役員の近 健太 氏は、ここまでの回復に貢献した販売店や仕入れ先の努力に感謝を述べた上で、「リーマンショック以降積み重ねきたいろいろな取り組みがベースにあった」と振り返った。近氏によると、リーマンショック時点での保有資金は約3兆円であったのに対し、現在はそれが約9~10兆円という水準まで積みあがっているという。これが今期活動を続ける上で非常に重要な点だと語った。また、下期のリスク要因について質問がおよぶと、「都市のロックダウンなどコロナ禍の拡大を注視していきたい」と述べた。
■Woven City、着工まであとわずか
決算発表後の記者会見には、豊田章男社長が登壇。質疑応答ではWoven City(ウーブン・シティ)について質問が挙がった。
豊田社長は、あくまで「私の思いは」とした上で、建設予定地※である富士山にかけて「2月23日を着工日にしたい」と明かし、プロジェクトが着実に進んでいることを説明した。
※トヨタ自動車東日本 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地に建設する予定。なお、同工場は今年末の閉鎖が決まっている。
その後、豊田社長は「Woven Cityで何をやるのか」についても言及。トヨタがモビリティカンパニーへ変革するために、将来利益をもたらす商品・技術の実証実験を行う場であることを改めて説明した。
また、Woven Cityは自動運転車用の道・歩行者専用の道・歩行者とマイクロモビリティが共存する道、という3種類の道を地上に張り巡らせる構想を掲げている(さらに地下には物流専用の道を通す想定)。その中で、居住エリアは150m四方に区切り、そこに「高齢者・子育て世代・発明家が住む」と、具体的なプランを述べた。
居住対象をこのようにした理由については、社会課題を抱える世代と同じ場所に住むことで、課題解決につながる発明をタイムリーに促したいからだという。実際「発明家」にあたる人々は、「一定期間で結果が出なければ入れ替わってもらう」ことも示唆し、スピード感を重視する姿勢を見せた。なお、現時点で3,000人程度の応募があることも明かした。
■リアルな世界で培った電動車フルラインナップを強みに
質疑応答では、業績が好調である米・テスラ社について、そしてトヨタのEV戦略についても言及した。
豊田社長は、「率直にテスラをどう思うか」という質問を受け、EVの販売とソフトウェアのアップデートで収益を上げるビジネスモデル、さらにCO2削減への取り組みなどに触れ、「われわれも学べる点が多々あるのではないか」との見解を示した。
その一方で、トヨタもCASE分野への投資や、TRI-ADの設立などを通じてソフトウェアファーストの車両開発を進めてきた点を説明。「現在の株式市場では完全に(テスラに)負けている」とした上で、トヨタにあってテスラにないものは「リアルな世界」だ語った。そこで培った電動車フルラインナップを持っていることは、顧客に選ばれる車として「一歩先を行っているのではないか」と自信をのぞかせた。
その後、電動化戦略については、取締役・執行役員である寺師茂樹氏が改めて説明した。寺師氏は、政府が2050年までにカーボンニュートラルを実現すると掲げている点を踏まえ、「実現はゼロエミッションのクルマでなければ」と指摘。水素や再エネなどの活用を含め、実現に向けていろいろな選択肢があるとした。
当面は一番実効性のあるハイブリッド(HV)を展開し、その後プラグインハイブリッド(PHV)、さらに電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)と、地域や顧客、さらには規制レベルなどに応じてフルラインナップをそろえることで、時代ごとの変化に対応しながら最終的にゼロエミッションの世界を実現する考えを示した。