プレゼンテーション「「WEIN挑戦者FUND」記者発表会」

株式会社WEIN / 金融

「WEIN挑戦者FUND」記者発表会

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日経BP

挑戦者を支援し“幸福社会”を! 本田圭佑氏らがファンド設立

プロサッカー選手の本田圭佑氏とヘルスケアスタートアップであるFiNC Technologies 設立者の溝口勇児氏、元ネスレ日本 代表取締役社長 兼 CEOの高岡浩三氏がタッグを組んだ──。

 2020年6月に「WEIN挑戦者FUND」を設立し、21世紀の課題解決に挑戦するスタートアップ企業を支援する。3者は同年5月28日にオンライン記者発表会を開催し、その概要を説明した。

 今回設立するWEIN挑戦者FUNDでは、資金投資だけではなく、人的リソースや成長資金戦略、マーケティングなどのノウハウを提供することで、体系的にスタートアップ企業を支援することを目指している。いわば「スタートアップ企業をプロデュースする存在」と代表パートナー 兼 Co-Founderの一人である溝口氏は位置づける。

 支援の対象となるのは、21世紀の課題解決に挑む国内スタートアップ企業だ。21世紀の課題とは、人が感じる孤独や退屈、不安のことを指している。

 溝口氏は、日本は平均寿命が長いにも関わらず、自分が幸せと感じる人が少ないことを指摘する。これは、20世紀の課題である戦争や貧困、病気といった問題が解決されつつある一方で、生活にゆとりが生まれ、21世紀の課題である孤独や退屈、不安が生まれたことが原因だと考えている。今後、「こうした感情に苛まれる人はどんどん増えていくのではないか」と同氏は危惧する。

 そこで今回、WEIN挑戦者FUNDの設立に当たり、こうした課題解決に挑む“挑戦者”を支援することを主軸とした。孤独や退屈、不安を解決する鍵として、設立者の3者が最も大切だと考えているのが、Well-Beingである。Well-Beingとは、心や体、社会の全てが良好な状態のことだ。

 実際、Well-Beingは非常に注目されている市場で、2017年における世界の市場規模は452兆円を超え、2015年から2017年にかけての市場規模成長率は12.8%だったという。多くの商品やサービスがコモディティ化して機能面では差が生まれにくくなっている中、「今後は人の感情や情緒に訴えかけるような製品やサービスに注目が集まるのではないか」と同氏は見ている。

 21世紀の課題解決やWell-Beingの実現を図るためには、まず、“挑戦する人”を増やす必要がある。とはいえ日本では、挑戦したいと思っても、実行に移すハードルがまだまだ高い。企業に勤める場合と比べて収入が減少したり、人手やリソースの不足を労働時間で補うために朝から晩まで休みなく働き続けたりといったことを余儀なくされてしまう。

WEIN挑戦者FUNDが行う体系的なサポートのイメージ(写真:発表資料のキャプチャー)
 これは、欧米に比べて「挑戦者を支援する人が少ないから」と同氏は指摘する。そこで、資金はもちろん、人的リソースやノウハウの提供まで体系的にスタートアップ企業を支援するファンドの設立に至ったというわけだ。

支援をするに当たり、「夢や志が社会に向いている起業家に投資したい」と溝口氏は話す。具体的には、Well-Beingの実現のために孤独や退屈、不安を減らすことのできる、コミュニティやつながりを創造するような事業や教育関連、ウェルネス、ヘルスケア、エンタテインメントといった領域に注目しているという。

 実は、溝口氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大を受けて、旗振り役として「#マスクを医療従事者に」という取り組みを行っていた(関連記事:医療現場の困りごと、細かく支援──新プロジェクト始動)。この取り組みでは、クラウドファンディングを通して、たった1日で約1万5000人から1億5000万円の資金を調達した。

 当時を振り返り、「不眠不休で体はしんどかったが支援してくれる人がこれほど多くいると思うと、心は一つも苦しくなかった」と同氏は話す。つまり、挑戦しているときや挑戦を支援しているときには、孤独や退屈、不安とは無縁だと実感したという。WEIN挑戦者FUNDでは、孤独や退屈、不安を減らす事業やサービスを世の中に生み出す支援をすると同時に、多くの人が挑戦に関われるプラットフォームを作ることで挑戦することのハードルも下げたい考えだ。

代表パートナー 兼 Co-Founderの一人である高岡氏は、「米国や中国に比べて、日本でイノベーションがあまり起きていないのは、主に4つの原因がある」と分析する。具体的には、(1)イノベーションの目利きがないこと、(2)資金不足、(3)人材やノウハウの不足、(4)イグジット機会の不足、である。

 (1)については、「大企業もスタートアップ企業も、イノベーションの目利きがない」と指摘。これは言い換えると、イノベーションが何かという定義があいまいであると考えられる。高岡氏は、顧客が問題として認識していない、あるいは顧客が解決を諦めているような問題を解決することがイノベーションだと捉えているという。

 (2)の資金不足に関しては、スタートアップ企業への投資額が米国や中国に比べて圧倒的に少ないことに触れた。高岡氏によると、日本のスタートアップ企業への投資額は中国の1/10以下、米国の1/50以下だという。

 (3)の人材やノウハウの不足に関しては、WEIN挑戦者FUNDで支援していきたい考えを強調した。同ファンドは、「プロの個人事業主の集団というユニークな形態をとっていく」(同氏)といい、広報のプロや人事のプロ、マーケティングのプロが集結した集団を目指すという。そのため、人材やノウハウが不足しているスタートアップ企業への人的な支援も可能にする。

 さらに、WEIN挑戦者FUNDがつなぎ役となり、投資側である大企業からスタートアップ企業への人材投入も視野に入れている。スタートアップ企業と大企業の双方を体系的に支援することで、「日本からより多くのイノベーションが起こせると信じている」と語る。

 (4)のイグジットの機会については、日本のスタートアップはほとんどIPOでイグジットするのに対し、米国では90%以上が大企業へのM&Aでイグジットしていることを指摘した。米国では既に、起業して大企業にM&Aをしてもらい、大企業のイノベーションに貢献するという文化ができており、「大企業とスタートアップ企業がつながりあってイノベーションを起こせるプラットフォームがある」と同氏は語る。そのため、今後スタートアップ企業の在り方が米国型へと変化していく中で、WEIN挑戦者FUNDのような役割が重要になると見ている。

代表パートナー 兼 Co-Founderの本田圭佑氏は、世界界の貧困を解決したいという思いで4年前から投資活動を始め、これまでに国内47社、欧米やアジアを含めると80社近くに投資してきたという。

 投資活動を通じて、特に米国のシリコンバレーでは「挑戦する側(スタートアップ企業)と支える側(投資家)の文化が成熟していると感じる」と同氏は話す。挑戦する側は、ミスを許容されるのでリスクがあっても挑戦しやすい。そして、リスクを背負ってでも世界展開を視野に入れた挑戦をするスタートアップ企業が多いため、成功した場合は支える側にとっても大きな利益が出るというわけだ。

 一方、日本では、「挑戦者は失敗してしまえば二度と立ち上がれなくなる可能性があり、リスクを恐れながらの挑戦では支援者が想像以上のリターンを得られないという悪循環が生じている」(同氏)という。

 挑戦を形にするには、投資を受けた後が重要になるが、サッカー選手としての活動もあるため、投資後に十分なサポートができないこともジレンマになっていた。そこで、WEIN挑戦者FUNDを設立することで、「起業家がぶつかるであろう課題をあらゆる面で支援していきたい」と同氏は意気込んでいる。