プレゼンテーション「justInCase launches P2P insurance in partnership with 8 companies」

株式会社 justInCase / 金融

justInCase launches P2P insurance in partnership with 8 companies

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がんになった人の保険金を加入者が分担 P2P保険の「わりかん保険」が開始

 インシュアテック事業を営むjustInCaseは、1月28日からP2P保険の「わりかん保険」の提供を開始した。これは、保険加入者の中からがんになった人が出たら、保険金を渡し、その費用を加入者全員で割って支払うという仕組みの保険だ。

日本の保険の原点「頼母子講」をテクノロジーで蘇らせる
 いざというときのために、みんなからお金を集め、必要な人に渡す。これは日本の保険の原点だと、justInCaseの畑加寿也社長は話す。「800年くらいまえに、頼母子講(たのもしこう)というのが生まれたといわれている。村長が村人からお金を集めてプールしておき、何かあったときに渡した。これが日本では保険の原点だ」。これを現代の手法で蘇らせたのが、わりかん保険だ。

 従来の保険では保険料を事前に支払うが、わりかん保険では事後になるのが大きな特徴だ。がんになった人が出たら一時金として80万円を渡し、月間にかかった保険金を合計して、翌月加入者で割り勘して支払う。そのため、「がんになった人がゼロなら、保険料もゼロになる」(畑氏)という仕組みだ。

 保険料については、一時金合計額に管理費用を約30%上乗せして、それを加入者で割る形を取る。畑氏は「助け合いの見える化」を挙げ、従来不透明だった保険会社の取り分についても開示する方針だ。管理費用は当初35%だが、加入者が1000人増加するごとに0.5%引き下げ、2万人時には25%まで引き下げる構造となっている。

 管理費は、保険料のバッファとしても使われる。もし加入者のうち、多くの人ががんにかかってしまったら、割り勘で支払う保険料が高騰する計算になるが、保険会社であるjustInCase側で上限保険料を定めてリスクを負担する。39歳までは500円、54歳までは990円、74歳までは3190円が上限となり、実際は0円からこの上限金額までが、月額保険料となる。

 「もし普通のがん保険を提供したら、保険料が500円になるような設計にしている」と畑氏。つまり、もしがんにかかる人が少なければ、保険料は500円より下がり、加入者にとってお得になるというわけだ。

 「従来の保険はすべてのリスクを保険会社が取る必要があった。そのためのリスクバッファが必ず保険料には入っている。これが、(わりかん保険では)多対多の契約なので、リスクバッファがかなり減る」と、畑氏は保険料が安くなる仕組みを説明した。

保険では日本初の「内閣府サンドボックス制度」案件
 ユーザーにとってメリットが多いように見えるわりかん保険だが、継続的にサービスを提供できるかには確認すべき点が多い。

 この仕組では、誰かががんにならなければ保険料は発生せず、保険会社への管理費も発生しない。保険事業として成り立つためには、統計的にがんになる人が発生する程度の加入者が必要だ。「加入者が数千件だと、がんになる人が出てこない。最低でも1万人に早急に達したい。加入者が3000人くらいいけば、求められる商品だといえるのではないか」(畑氏)

 また不正請求の防止も課題だ。通常の保険では、誰かががんにかかると保険料を支払わなければいけないため、保険会社は厳しく審査する。しかし、保険金をあとから加入者が支払うわりかん保険の仕組みでは、保険料上限までは保険請求が増えたほうが、保険会社の利益にもつながってしまう。畑氏は、通常の保険と同じように、保険業法の定めに従って厳正に審査していくと話すが、ビジネスモデルとしては一定の利益相反が発生してしまう。

 がん保険からスタートしたのも、不正請求をにらんでだ。「モノを壊すことや死ぬことは自分の意志でもできるが、自らの意思でがんになるのはハードルが高い」と、畑氏はこのジャンルから始めた理由を説明した。

 こうした点から、わりかん保険では革新的なビジネスアイデアの実証実験に使われる「内閣府サンドボックス制度」のもとで提供される。金融分野では2件目、保険では日本初だという。2月1日から1年間、サンドボックス制度内で実証実験として運用され、問題がなければ継続するという形だ。既存の契約者はそのまま継続できるという。

中国で普及進む、P2P型保険
 保険料を加入者がリスクをとって分担するP2P型の保険は、中国で先行しているサービスだ。中国のアリペイ子会社が提供する同種の保険は、加入者が1億人を突破。芝麻信用のスコアを組み合わせるほか、加入者が査定も行うなど、進んだ仕組みだ。ドイツや米国でも似た仕組みのP2P型保険があり、急速に加入者を増やしている。

 「わりかん保険では、全ユーザーと保険会社で助け合いをする形。保険会社1社ですべてのリスクを取るわけではないので、いままで作れなかったような商品が提供できる」と畑氏は意気込む。当初はがん保険だが、今後、生保や損保については協業によって広めていきたいとした。

 わりかん保険自体は、8社と販売パートナーとして提携し、オンラインでの送客のほか子会社などを通じて対面営業でも提案に含めていく。P2P保険という新たな仕組みが、海外のように根付くかどうかに注目したい。