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楽天モバイルの新料金 UN-LIMIT VI が「全国民に最適」な理由(石野純也)
三木谷浩史氏の太っ腹ぶりに驚いた人も多かったのでは?

楽天モバイルが4月に導入する新料金プランの「UN-LIMIT VI」は、「常識を覆す」をモットーにしている同社らしく、これまでの携帯電話のそれとは一味も二味も違うものに仕上がっていました。今回は、いい意味でです。段階制にして、20GB以下の金額をahamo、povo、SoftBank on LINEに合わせて値下げするところまでは想定の範囲内ではありましたが、1GB以下をほぼ無条件で0円にするのはかなり思い切った印象です。ミッキーこと、同社CEO・三木谷浩史氏の太っ腹ぶりに驚いた人も多かったのではないでしょうか。

ビジネス視点で見ると、収支が合うのかや、競争環境的にどうなのかといった心配はありますが、いちユーザーとして考えると、契約しない手はありません。三木谷氏は、「全国民に対して最適なプラン」とぶち上げていましたが、あながち大げさではないような気もしています。少なくとも、楽天市場で買い物をする人であれば、とりあえず契約しておいて損はありません。新規契約の事務手数料はかかりませんし、1GB以下なら毎月の料金も0円だからです。

実際、そう考えた人が多かったのか、新料金発表後に契約が殺到。申し込み用のサイトに障害が発生し、土日は一時、つながりにくくなってしまっていました。SIMカードの配送遅延も起きているようです。楽天モバイルの契約者数は、UN-LIMIT VI発表時点で220万。残り80万のユーザーは、今申し込めば22年2月までは無料でデータ容量が無制限になるため、それも影響したものと見られます。お試しで契約できるため、デュアルSIM端末に1枚入れておくのにもピッタリです。

それ以上に、楽天のユーザーにとって重要なのは、SPUのポイントが+1%になる点でしょう。SPUとは、スーパーポイントアッププログラムのことで、特定の条件を満たすとポイント付与率が上がる仕組みです。実は、楽天モバイルを契約すると、これが+1%になり、楽天市場でのポイント還元率が上がることになります。1GB以下は料金がかからないため、とりあえず契約しておくことで、よりお得にお買い物ができるというわけです。

こうなると、もはや通信回線というより、ポイ活の道具のような様相。SPUの条件は契約しているだけなので、極端な話、端末にSIMカードを刺して通信する必要すらありません。使うか使わないか分からなくても、とりあえず契約しておけばOKです。

気が向いたらサブ回線として、デュアルSIM端末の2スロット目に入れたり、eSIMのプロファイルを書き込んでおくこともできます。キャリア端末だとほぼほぼシングルSIMですが、iPhoneやPixelなら、SIMロックさえ解除すればeSIMが利用できます。大手3キャリアを契約しつつ、サブ回線としてeSIMのプロファイルを書き込んでおき、楽天モバイルの方が電波状況がいいときだけ、そちらに回線を切り替えてもいいでしょう。

楽天モバイルは新規参入キャリアで、エリアはまだまだ大手3キャリアには及びませんが、ミクロな視点で見ていくと、場所によっては大手3キャリアより電波が入るというケースもあるからです。例えば、筆者はiPhone 12 ProにauのSIMカードを挿しつつ、楽天モバイルのeSIMプロファイルを書き込んでいますが、自宅では楽天モバイルの方が電波がしっかり届いていて、速度も出ます。そんな場所に来たときだけ、楽天モバイルに切り替えて、1GBを超えないように使えば、追加料金もかかりません。

さらに、Rakuten Link経由に限定されますが、通話料金も無料なため、大手3キャリアで通話定額オプションを解約して、固定電話など、どうしても電話からの発信が必要なときだけRakuten Linkを使うという手も。せっかく1GBまで無料になり、しかも通話料が無料なので、SPU目的で契約したからと言って、寝かせておくのはもったいないと思います。どうせ契約したなら、まずは無料の範囲で使い倒してみるといいでしょう。

こんな使い方ができることもあり、1GB以下にデータ使用量を抑える無料ユーザーが殺到してしまい、いつまで経っても黒字化しないのではないか……と余計なお世話ながら心配してしまいますが、当の楽天モバイルも、無料ユーザーが集まる事態は想定の範囲内のようです。楽天の常務執行役員 CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、河野奈保氏は、「SPU目当てで契約する人もいるのでは」という質問に対し、「そういう方もいると思う」と答えています。楽天市場で買い物してくれれば、収益には貢献するというわけです。

三木谷氏も、楽天モバイル契約者が「様々な楽天グループのサービスを、便利に楽しく使っていただけることが分かった」と語っています。これは、楽天の会員がSPU目当てで楽天モバイルを契約し、上がった還元率で買い物をもっとするようになるということ。このように見ると、1GB以下を無料にできたのは、楽天経済圏とも呼ばれる強力なエコシステムを持っているからこそと言えそうです。

一方で、楽天は、4月1日から楽天ゴールドカードのSPUを変更し、還元率を+2%から+1%に下げる予定。ちょうど楽天モバイルのUN-LIMIT VIと同じタイミングですが、グループ全体で付与するポイントの調整をしていることがうかがえます。ある意味、モバイルシフトとも言えそうですが、楽天モバイルも、あまりに1GB以下のユーザーが増えすぎてしまうと、ポイント付与率が調整されるおそれはあると思います。モバイル事業は巨額の設備投資が先行するため、無い袖は振れないということなのかもしれません。