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【東京モーターショー2017】マツダはエンジン技術と“美”で勝負
東京モーターショーに、「魁(カイ)コンセプト」と「ビジョン クーペ」という2台のコンセプトモデルを出展したマツダ。自動車の電動化や自動運転技術をアピールする他メーカーとは一線を画し、エンジン技術の追求とクルマの“美しさ”で勝負するその姿勢に、同社の気概と心意気を感じた。
シックなブースのイメージに見る意気込み
他の国内メーカーが比較的明るいイメージでブースを構築しているのに対し、マツダはブース全体を黒で統一。照明もどちらかといえば落とし気味であった。なにもこれは今回の東京モーターショーに限ったことではなく、この9月にドイツで開催されたIAA2017(フランクフルトモーターショー)でもブースは同じイメージでデザインされていた。そこから感じられるのは、日本の量産メーカーとしてグローバル展開を行うマツダではあるが、「走る楽しみ」を前面に出しながら未来に向けて徐々にプレミアムなイメージも浸透させたいという意気込みである。
現在のマツダは、魂動デザインと同時にSKYACTIV技術を採用した新世代のラインナップが出そろい、2012年から推進しているブランド再建の第1フェーズを終えた。上述の意気込みについては、プレスカンファレンスにおける小飼雅道社長兼CEOのコメントを借りれば、マツダが「構造改革の第2ステージとして“開発から販売までの質的成長”と“ブランド価値向上”に取り組んでいる」という段階に入ったことも大いに関係しているはずだ。
EVやAIではなく、理想の内燃機関で未来を切り開く
このプレスカンファレンスにおいてマツダは、クルマの電化も重要視しながら、今ある技術の進化――つまり内燃機関の技術革新を同時に行い、適材適所で対応するパワートレインの「マルチソリューション」を提案した。その具体例が、ガソリンエンジンで世界一を目指した「SKYACTIV-X」の開発だ。
小飼社長兼CEOはこのSKYACTIV-Xを「夢のエンジンだ」と紹介。「マツダ独自の燃焼方式、SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition=火花点火制御圧縮着火)によって、ガソリンの希薄混合気を広い走行範囲で圧縮着火させる技術の実現化に、世界で初めてめどを付けた。ガソリンエンジンの高回転域までの伸びのよさと、ディーゼルエンジンの優れた燃費、トルク、レスポンスといった双方の利点を兼ね備え、優れた環境性能と出力、動力性能を両立している」と、その実用化が近いことをうかがわせた。
他の国内メーカーがEVをはじめとしたクルマの電化や、AIによる自動運転を前面に押し出してきたのとはいささか対照的で、内燃機関の可能性をまだまだ諦めないという、過去ロータリーエンジンを唯一量産化した技術屋としての魂や矜持(きょうじ)を垣間見たような気がしたのは私だけではないだろう。現在の技術を培ってきたノウハウや英知で、次世代のパワートレインを作り上げるという気概の背景には、マツダの提唱する「クルマによってもたらされる『走る歓び』や『人生の輝き』」というテーマが垣間見られる。
2台のコンセプトカーが放つマツダの気概
いっぽう、今回のショーで初公開された次世代商品群の先駆けとなるコンパクトハッチ、魁コンセプトと、デザインコンセプトとなるビジョン クーペは、そうしたマツダの哲学や改革の第2ステージを象徴する具体例だ。
小飼社長兼CEOはこれらの出展車両について、「魂動デザイン哲学をベースに、より自然な生命感を感じさせるエレガントで上質なスタイルに深化させた。無駄な要素を極力そぎ落としたところに美しさを見いだす、日本独自の美意識をクルマのデザインに表現している」とビジョン クーペを、「次世代ガソリンエンジンのSKYACTIV-Xと、人間中心の思想を突き詰め、各機能を最適化した次世代SKYACTIV-Vehicle Architectureに加え、深化した魂動デザインを搭載したコンパクト ハッチバック」と魁コンセプトを紹介。両モデルのアンベールを行った。
魁コンセプトは、SKYACTIV-Xをパワーユニットに採用した、次世代「アクセラ」のプレビューとみるのが妥当だろう。前後のオーバーハングを切り詰め、塊から削り出したようなフォルムは、これまで以上にスポーティーな走りを期待させる。いっぽうのビジョン クーペは、魁コンセプトが量産車の予告編だとすれば、こちらはその次の世代のデザインテーマを表現したスタディーで、前回2015年の東京モーターショーで登場した「RXビジョン」の進化版と捉えるべきだろう。
フロントミドシップを思わせる後退した4ドアのキャビンが、エレガントなクーペスタイルを形作る。EVやAIで未来を表現し期待感をもたらす他のメーカーとは真逆ともいえる、デザインだけでワクワクさせるアプローチには、会場に足を運ぶ「走る歓び」をクルマに求めるファンに、「マツダはどこか違う」と必ず感じさせるはずだ。