MOTOR DAYS
ホンダ、新型「N-BOX」を発表
ホンダは2017年8月31日、新型「N-BOX(エヌボックス)」を発表した。9月1日から発売する。中部地区での発表会場となったヒルトン名古屋からレポート。
80kg軽量化。助手席スーパースライドシートを採用
初代N-BOXは東日本大震災のあった年の暮れ、2011年12月にデビュー。それからわずか5年半余りで累計販売台数112万台(2017年8月時点)を達成したほか、モデル末期の2015年と2016年に2年連続で軽の新車販売台数1位になるなど、常識破りの売れ方をした大成功モデルだ。
今回の新型は、約6年ぶりの全面改良。モデル末期でも勢いが落ちなかった人気車ゆえ、好評だった外観デザインはおおむねキープコンセプト。特に標準モデルの場合、見た目の印象は大きく変わっていない。
一方、初期受注では販売の半数を超えているという新型N-BOXカスタムについては、LEDランプをふんだんに使ったフロントをはじめ、最近のホンダ普通車にも通じる斬新で凝ったデザインになっている。
プラットフォームは全面変更。先代で足かせとなっていた車重を、新型では高張力鋼板の使用拡大やレーザー溶接の導入などによって約80kg軽量化したことで、加速性能や燃費性能の改善を図ったている。実際には装備の増加などで70kgほど増えた要素があるため、実質的には150kg軽量化したことになるという。
また、パッケージング面では従来のセンタータンクレイアウトを踏襲しつつ、新設計の樹脂製燃料タンクを採用することで、570mmの前後スライド量を持つ助手席スーパースライドシートを新設定。後席とのコミュニケーションをとりやすくするなど、シートアレンジの選択肢や自由度を高めている。助手席足元のスペースを確保するため、エアコンユニットのレイアウトも一新された。
エンジンもすべて新開発
エンジンについても自然吸気とターボ、共に完全新開発のロングストロークタイプ「S07B」(ボア60.0mm×ストローク77.6mm)に変更された。
自然吸気エンジン(58ps、65Nm)は、吸気側にVTEC(可変バルブタイミング機構)を備えた「i-VTEC」仕様となり、ターボエンジン(64ps、104Nm)には軽自動車で初の電動ウエイストゲートを採用。
また、CVT(無段変速機)に関しても、プーリーの大径化(150mm→160mm)などで伝達効率を約2~3%向上させている。
これらによりJC08モード燃費は、自然吸気エンジン車で27.0km/L(FFの場合)、ターボ車で25.0~25.6km/L(同)を達成している。
Honda SENSINGを全車標準化
先進安全装備や運転支援装備については、単眼カメラとミリ波レーダーを併用する「Honda SENSING」をホンダの軽で初採用し、しかも全車標準とした。
これにより、衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、先行車発進お知らせ機能などのほか、ステアリング制御によるLKAS〈車線維持支援システム〉、路外逸脱抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、そして標識認識機能やオートハイビームを備えるなど、普通車の上位モデルに匹敵するものになった。
138万5640円からスタート。ターボやカスタムはそれぞれ約20万円高
ラインナップは従来通り「N-BOX」と「N-BOX カスタム」の2本立てで、それぞれに自然吸気エンジン車とターボ車がある。価格はN-BOXが138万5640円~、同ターボが169万5600円~、カスタムが169万8840円~、同ターボが189万5400円~。
生産は引き続き、本田技研の鈴鹿工場で、販売目標台数は月1万5000台、つまり年間18万台。なお、かなり早くからティザー広告や既納ユーザーへの告知が行われており、初期受注はすでに約2万5000台とのこと。
ショートインプレ:自然吸気モデルとターボモデルの2台に短時間試乗
会場には試乗車として、N-BOXの自然吸気エンジン車とN-BOXカスタムのターボ車が用意されていたので、短時間ながら両方に試乗してみた。
自然吸気エンジン車の第一印象は「ずいぶん静かになったなぁ」というもの。特にアクセル開度が低い時のエンジン音は、初期の初代N-BOXと比べると見違えるように静かになった。これは、ボディが軽量化されたことで加速がよくなったせいもあるだろう。アクセルをベタ踏みすれば、やはりそれなりにエンジンは唸るが、スーパートール型のNAモデルとしては不満ないレベルと感じた。
ターボ車の方は、カスタムということもあって、静粛性や乗り心地がワンランクからツーランクくらい上がる感じ。高級タイヤを履いているような、しっとりした乗り味がある(タイヤの指定空気圧も高くないようだ)。ターボラグはほぼ皆無で、静粛性も高く、少なくとも市街地を走る限りは、もう「まったく」不満がないと感じた。また、後席での静かさと乗り心地の良さ(街乗りでは前席以上?)、そして内装質感の高さも印象的だった。
カスタムのターボともなると諸経費込みで200万円オーバーだが、ミリ波レーダー&単眼カメラ方式のHonda SENSINGも標準ということで、検討時にグラッとくる仕上がりなのは間違いない。
ちなみに発表会場には外装パーツやナビなど純正アクセサリーをフル装着した車両が展示されていたのだが、そのディーラーオプション込み価格は284万4396円。いやはや、なかなかの高額車だ。
ハンディータイプ蓄電池「リベイド E500」も同時発売
ホンダはこの日、ハンディータイプの蓄電池「LiB-AID(リベイド) E500」を新型N-BOXと同じ9月1日から発売すると発表した。
リベイド500は、リチウムイオン電池を使った持ち運びができる蓄電池。最大出力は500Wで、家庭用コンセントやクルマのアクセサリーソケットから約6時間で満充電可能。また、ホンダ独自の正弦波インバーター技術により、パソコンなどの精密機器へのAC100V給電ができるのも売りだ。記憶のいい方は覚えていると思うが、2015年秋の東京モーターショーで展示されていたコンセプトモデルの市販版である。
一つのリベイドE500で、300Wの電気が約1時間、500Wなら約35分間、取り出せるという。目安としては100W電球なら約3時間、扇風機なら約9~15時間、液晶テレビなら約5時間、スマートフォンなら約20回充電可能とのこと。また、リベイドE500を2台、あるいはリベイドE500とホンダの発電機を並列接続することで、500Wを超える電気製品を使用することができるという。
従来のエンジン式発電機やカセットボンベ式発電機に対するメリットは、一酸化炭素が出ない(屋内でも使用できる)、静か、取り扱いが簡単、など。デメリットは最大出力が小さい(カセットボンベ式の3分の1程度)ということのようだ。
サイズは全長266mm×全幅182mm×全高248mmと、だいたいシューズボックス程度の大きさ。重量は5.3kg。交流コンセントが2口、USB出力端子が2口備わる。
販売目標は年間3000台で、当面は市場の動向を見るため、4輪販売店のホンダ・カーズのみで販売する。価格はリベイドE500単体が7万9920円(カラーは赤のみ)、アクセサリーソケット充電器同梱の場合が8万6400円(カラーは赤、白、黒の3色)。