プレゼンテーション「ホンダ 記者会見」

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ホンダ 記者会見

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ホンダが国内主力の狭山工場閉鎖を決断した理由

狭山工場を寄居工場に集約し2021年度末をもって閉鎖

 ホンダは4日、八郷隆弘社長による緊急記者会見を行い、日本国内の四輪車生産体制の集約を発表した。日本工場で蓄積した新技術生産ノウハウを持つマザー工場機能を新設して日本がグローバルをリードする体制を構築する。電動化・知能化など新技術への自動車大転換に対応するのが狙いだ。

 具体的には、ホンダの国内四輪車工場のうち、埼玉製作所の狭山工場を寄居工場に集約し、2021年度末をもって閉鎖する。

 その一方で、子会社の八千代工業については完成車生産事業の完全子会社化について検討。基本合意を4日に締結したことで、八千代工業四日市工場は、ホンダの四日市工場としてホンダ車少量生産車種専用工場に切り替わる。これに鈴鹿工場は従来通り、軽乗用車・スモールカー工場として継続することで、ホンダの国内四輪車生産は埼玉・寄居、鈴鹿、四日市と新たに3完成車生産工場体制に移行することになった。

 今回のホンダの国内四輪車生産体制の再構築のポイントは、伊東前社長体制が掲げていた「国内100万台生産維持」の旗を降ろしたことである。八郷社長は、会見の質疑応答で「ホンダの国内四輪車生産能力は、現在106万台規模あるが、これを集約して2021年には81万台能力とする」ことを明言した。

 かねてから現地現物でグローバル化を進めてきたホンダは、母国日本での生産・販売は「100万台」確保を掲げてきたが、国内四輪車販売は昨年2016年も70万台規模にとどまっている。八郷ホンダ体制として将来の内需見通しも含めて、国内生産体制は国内向け70万台プラス輸出向け10万台の80万台規模に是正することが、競争力向上になると経営判断に至ったと言えよう。

 ホンダはこの国内生産体制の縮小について慎重な言い回しをしているが、国内主力工場の狭山閉鎖は苦渋の決断ではなかったか。狭山といえばホンダにとって鈴鹿と並んでホンダの象徴的な地でもある。都市対抗野球でも「ホンダ狭山」は出場の常連だ。それでもあえて寄居への集約を経営判断したのだろう。

 ただ、国内自動車市場は今後も少子高齢化の進行などで厳しい予測もあり、工場の生産能力と需要のギャップで稼働率の低下が広がる可能性もある。ホンダに限らず自動車各社は、グローバル化による海外現地生産が進む一方で、日本国内生産における稼働率維持へ生産体制見直しを迫られるケースが波及することにもなりそうだ。

八千代工業の四日市工場は
完全子会社化
 ホンダの八郷社長による国内四輪車生産体制再構築への緊急会見は、先述した通り、50.4%を出資する連結子会社である八千代工業の完成車生産事業の完全子会社化を検討する基本合意書を4日に両社が締結したことからでもあった。

 八千代工業は、ホンダ系の燃料タンクや樹脂関連の部品メーカーだ。その一方でホンダからは軽トラック「アクティ」を中心とした車両生産を受託してきた。とくに四日市工場はホンダ鈴鹿製作所とも近く、一時はホンダの軽自動車生産を一手に引き受けるとも言われたほどである。現在、軽商用車アクティの他、S660や福祉車両・特装車の受託生産を手掛けている。

 ホンダがこの八千代工業の四日市工場を完全子会社化するのは、少量生産専門工場と位置づけて、鈴鹿製作所と連動させることで、より効率的な国内四輪車生産に結びつけることが狙いであろう。

 一方、埼玉製作所の集約については、1964年から稼働している狭山工場の老朽化が進むのに対し、2009年に稼働開始したエンジン生産の小川工場と2013年稼働開始の寄居工場は最新の生産技術を導入している。このため、思い切って狭山工場を寄居工場に集約し、長い歴史を持つ狭山工場を閉鎖することにしたのだ。

 狭山工場の生産車種は、ステップワゴン、オデッセイ、ジェイド、レジェンド、アコード、フリードで中型車クラスであり、25万台の生産能力を持っている。寄居工場はフィット、ベゼル、グレイス、シャトルの現行車種生産に上記車種が加わることになる。現状のホンダ国内四輪車生産能力が106万台で実質的に狭山工場25万台能力分が減ることで、81万台能力を適性稼働規模と判断したのだ。

八郷社長は「国内で70万台を安定的に販売していきたい。輸出分を10万台程度と見て、国内が増えれば弾力的に対応していく」と言う。

 一方でホンダが国内四輪車生産体制を4工場から3工場にして81万台能力に縮小するのは、グローバル生産の需給ギャップ調整の一環でもある。ホンダは伊東前体制下で「グローバル四輪車600万台販売へ」を掲げ拡大路線を打ち上げていた。これに伴う生産増強で、現状でグローバル生産540万台能力に対し、昨年度(2016年度)は506万台生産の実績にとどまっている。

 つまり、ホンダグローバル拡大路線は修正を迫られていたのだ。八郷社長も「日本生産の集約で527万台能力となる。これで昨年の506万台生産として96%の稼働率となる。日本の他にもブラジルやアジアの工場の稼働率は不十分であり、今後重点的に見直し、需給バランスを調整していく」とする。

日本国内の生産台数は縮小するが
生産体制を「進化」させ雇用に配慮
 一方で、ホンダは日本の四輪車生産を縮小見直しに伴う雇用問題懸念については「狭山の4600名の従業員は基本的に寄居へ異動してもらい、人の能力を見極めて培ってきた生産ノウハウを最大限生かしていく」(山根生産担当専務)と配慮する。

 今回の発表では「国内生産の縮小」をあえて前面には出さず、生産再編によって「日本の四輪車生産体制を進化させる」という説明だった。つまり、ホンダは「国内生産拠点の進化」と「グローバル生産技術の進化を日本で行う機能の新設」を強調することで、「日本のモノづくりの強化」を目指すというものだ。

 特に、狭山工場を閉鎖して集約する寄居工場は、電動化や自動運転などの新技術に対応したモジュラー戦略の標準化で、「海外工場のショーケース」としていく。ホンダは電動化についてもすでに八郷社長が「2030年までにホンダ車の3分の2を電動化する」と方向性を明らかにしている。

 八郷社長は今回の会見でも「EVは日立オートモーティブと協業して進めているがEVだけでなくHV、PHVにFCVも電動車だ。FCVは米GMとスタックの共同開発・合弁生産を進めているし、いろいろなパートナーと幅広く協業していく」と電動化について深く言及している。

 その意味では、今回の国内生産再編において寄居工場がホンダの最新鋭工場として大転換を図り、グローバル戦略の視点からもより重要な生産拠点として位置づけられることになる。

 いずれにしても、ホンダが日本車メーカーにおいて「トヨタ主体の連合軍」と「ルノー日産・三菱連合」の狭間で孤立していると見られる中で、異業種提携も厭わずに独自性をこれからどう打ち出していくか。

 八郷体制が従来の拡大路線や品質問題からの調整・見直しに区切りを付けつつ「ホンダらしい」新技術対応路線を示すことができるか、これから真価を問われることになる。