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ホンダ、4輪車生産体制変更に関する会見での八郷隆弘社長スピーチ全文
本田技研工業は2月19日、グローバルでの4輪車生産体制の見直しについて発表。2021年中に「ホンダオブザユー・ケー・マニュファクチュアリング・リミテッド」での完成車の生産を終了する方向であること、同じく2021年中に「ホンダターキー・エー・エス」での「シビック セダン」生産を終了することなどを明らかにした。
同日、東京 青山のホンダ青山本社で本田技研工業 代表取締役社長 八郷隆弘氏が記者会見を行ない、欧州での4輪車生産体制の見直しについてスピーチした。以下にこのスピーチ内容の全文を紹介する。
運営体制の変更
急速な事業環境の変化を踏まえ、二輪車・四輪車・パワープロダクツの各領域で運営体制の変更を行います。
・二輪車領域
二輪車においては、2010年より、営業(Sales)・生産(Engineering)・開発(Development)・購買(Buying)各部門の連携・強化の取組みを始め、2014年からは熊本製作所において、生産・開発・購買が一箇所に集まり、商品開発を進めてきました。
一方、市場環境を見ると、従来の日本・欧米メーカーに加え、中国やインドのメーカーとの競争がさらに激しくなっています。また、各国での環境規制強化への対応、新たな市場の拡大に向けた取組みが必要となるなど、事業環境はこれまで以上に急激に変化を続けています。そのような状況の下で、二輪事業全体でさらに一体となり、スピードを上げることで、競争力を高めていく必要があります。
そこで、従来の商品開発体制をさらに進化させ、S・E・D・Bの各部門が部門を超えて、より協調と連携ができるように、二輪事業本部と二輪R&Dセンターを組織として一体化させます。この体制により、新商品の企画構想、開発、生産立ち上げ、量産を一貫して行い、商品魅力のみならず、コスト、品質、開発スピードを高め、グローバルでの競争力を確保していきます。
・四輪車領域
現在、四輪車業界は大きな転換期を迎えています。このような状況の中で、Hondaが生き残っていくためには、従来以上に、お客様のニーズに応える商品を迅速に提供していくこと、そして、次世代に向けた新しい価値を創造し続けていくことが必要です。これらを実行するために、四輪事業体制の強化を行います。
まず、事業環境の変化にスピーディに、柔軟に対応するため、代表取締役副社長が四輪事業本部長を担当し、四輪事業全体を束ねる責任者となることで、即断・即決できる体制にします。
そして、四輪事業本部長の下に、S・E・D・Bの連携により、グローバル戦略や新たなモビリティサービスの企画・推進を担う「四輪事業担当」と、重要課題である既存事業における各地域の協調と連携の更なる強化のために、地域・事業両方の観点からグローバルで最適な営業戦略を推進する「四輪営業担当」の2名の責任者を置き、各領域の機能を強化します。
特に、四輪営業担当は、市場のニーズや環境規制が近い地域での商品ラインアップの共有など、各地域のお客様の要望に的確に応えると同時に、より効率の高い営業戦略を立案・実行します。
また、研究所では、四輪事業本部との連携をより深めていくために、商品開発を担う「オートモービルセンター」を新設します。
・パワープロダクツ領域
近年取り組んできたエネルギービジネス領域の事業化への目途がついてきたことから、その取組みを加速させるため、エネルギービジネスを新たにパワープロダクツ事業本部の担当事業に組み入れ、推進します。
そして、従来からの「パワープロダクツ商品の提供」に、エネルギーなど「将来に向けた新事業」を加え、「移動と暮らしに新価値を提供していく」という機能に進化していくことから、新たに「ライフクリエーション事業」という考えに領域を拡げ、推進していきます。
・研究・開発領域
本田技術研究所は、「将来に向けた新価値創造」と「タイムリーで競争力の高い商品開発」を行っています。それをさらに強化するために、「先進技術研究」と「商品開発」の組織を分け、役割を明確にすることで、それぞれの領域に集中できる運営体制に再編することにしました。具体的には、
・将来のモビリティ革新技術と先進技術の創造に取り組む「先進技術研究所」
・四輪商品開発を担う「オートモービルセンター」
・四輪を中心にデジタル技術を活用した開発を担う「デジタルソリューションセンター」
・ライフクリエーション事業と連携して商品開発を行う「ライフクリエーションセンター」
以上の組織に再編します。
グローバル四輪車生産体制の変更
現在、電動化の加速を見据え、グローバルにおける「生産配置と生産能力の適正化」という方針で、四輪車生産体制の見直しを進めています。これは既にタイ、日本、ブラジルと各地域で着実に推進しています。また、市場動向や環境規制の強化など、各地域で大きな変化が起こる中、電動化の加速に対応できる生産体制づくりを、特に需要ボリュームが望める中国、米国、日本で進めています。
一方、欧州は、電動車ラインアップの強化が必要となる中、欧州域内での電動車生産は競争力などの観点で難しいと判断し、今後はグローバルの生産リソースをフル活用し、競争力のある商品を市場に提供します。特に、先程ご説明した、地域間での連携強化の考えに基づき、欧州は環境規制の方向性が近い中国と商品ラインアップを共有するなど、戦略的に電動化を含めた事業基盤の強化を図ります。
また、英国の四輪車生産工場、Honda of the UK Manufacturing Ltd.(以下、HUM)に関しては、現在、CIVIC HATCHBACK(シビックハッチバック)1機種をグローバルに供給していますが、今後の、グローバルでの生産配置を検討した結果、次期モデルから北米など他地域で生産する方向で検討を進めることにしました。
こうした判断に基づき、2021年中をもってHUMでの完成車生産を終了する方向で労使間での協議を開始し、また、トルコの四輪車生産工場であるHonda Turkiye A.S.も、同様に2021年中に現行Civic セダンの生産を終了することにしました。
欧州では、CAFE規制が厳しくなる中、現在Hondaが掲げているグローバル目標の2030年に5年先駆け、「2025年に欧州での四輪車販売台数の3分の2を電動化する」という目標を達成し、環境対応のリーディングカンパニーとして、欧州におけるHondaブランドを強化していきます。
結び
以上、本日発表した2つの取組みについてご紹介しました。こうした取組みと共に、将来に向けて二輪、四輪、ライフクリエーション、ジェットという、Hondaの各事業の更なる体質強化を確実に進めていきます。