プレゼンテーション「日産・DeNA「EasyRide」実証実験開始に関する記者会見」

日産自動車株式会社 / 技術

日産・DeNA「EasyRide」実証実験開始に関する記者会見

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乗りものニュース

日産×DeNA「イージーライド」の利点と課題 公道での実証実験開始、実用化の目途は?

 日産とDeNAは2018年2月23日(金)、新しい交通サービスとなる「イージーライド(Easy Ride)」の実証実験を神奈川県横浜市のみなとみらい地区で同年3月5日から18日にかけて行うと発表しました。

「イージーライド」は簡単に言ってしまえば、自動運転の車両を使ったタクシーです。ただし、単にA地点からB地点まで移動するだけでなく、さらなる価値をプラスした次世代の交通サービスを提案しています。

 車両は、日産が開発中の最先端のもので、走行エリアを限定していれば無人での走行も可能な運転自動化「レベル4」を実現。自動運転によって、みなとみらい地区の主要施設を結ぶ約4.5kmの公道を周回します。利用者はスマートフォンの専用アプリを使って予約し、周回コース内にある4か所の乗降地点で乗り降りします。走行は自動ですが、公道ということで、日産の開発車が運転席に座って万一のトラブルに備えます。また、遠隔地から車両を監視する車両管制システムも用意されており、センターから遠隔操作でのサポートも可能。どちらかと言えば、お台場などを無人で運行している新交通「ゆりかもめ」に近く、無人タクシーに向けた第一歩と呼べるような内容です。

 車両を詳しく見てみれば、先代「リーフ」をベースに最先端のセンサーを満載。「ライダー」と呼ばれるセンサーはクルマの周囲にぐるりと6個。前方確認用のカメラはステレオカメラと3個の単眼カメラ。前方を監視するレーダーも備わっています。周囲を監視するミニカメラは車両前後左右に4個。もちろんGPSも利用。さらに車両管制システム用のカメラも車両前後左右に4か所。リヤの荷室にはコンピュータがぎっしりと詰まっているとか。現在進行形の開発車両なので、センサーを載せられるだけ載せているという格好ですが、量産モデルでは、車両価格を抑えるために可能な限りセンサーは減らされることでしょう。

 いまはまだスタートしたばかりの「イージーライド」ですが、そのサービスが完成すれば、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に挙げてみると以下になります。

●「イージーライド」のメリット
・早朝から深夜まで、いつでもスマートフォンで気軽に呼び出せる。
・人件費がかからないのでコストは50%オフ。
・目的地の設定は、システムとの会話で行うので、簡単。
・おすすめの目的地や買い物、観光情報を教えてもらうことができる。
・提携したお店のクーポンを利用できるので、買い物や外食がお得に。
・買い物などで一時的にクルマを離れるときも、自動運転で周囲を走っていてくれるので買い物中の駐車スペースを気にする必要がない。
・日本語だけでなく英語や中国語など多国語に対応可能。海外からの観光客にも便利。
・EVなので走行が静かで快適。

 また、「イージーライド」が普及すると、社会的なメリットも生まれます。

●「イージーライド」の社会的メリット
・自動運転車なので交通事故が90%ほども減少。
・EVなので排気ガスによる大気汚染が減少。
・自動運転車が増えると交通の流れがスムーズになり、渋滞が減って、移動時間が短縮。
・運転のできない高齢者や若年者、障害者も移動が気軽にできるようになる。
・労働者不足でも交通サービスを維持できる。

 とはいえ、これらのメリットを享受できるようになるまでには、いくつもの課題をクリアする必要があります。

「イージーライド」は非常に魅力的な交通サービスであることはわかりましたが、これが実現するまでには、以下のような課題があります。

●「イージーライド」実現までの課題
・自動運転化「レベル4」を低コストで完成させなくてはならない。
・EVをタクシーに使うためには充電時間の短縮が求められる。
・ドライバーのいない自動運転化「レベル4」で万一の交通事故がおきてしまったときに対応する法整備が必要。
・タクシー会社など既存の交通サービス企業との関係を考える必要がある。
・運営システムやサービスの洗練が求められる。
・充実した通信インフラと充電インフラが必要。

 車両などのハード、法律などの制度、運営などのソフト、充電施設などのインフラといったように、実用化にむけた課題は山積しています。しかも、日産とDeNAは、2020年代早期には本格サービス開始を目標としています。つまりは、4年から5年後、遅くとも10年以内。遠い未来ではなく、ほんの近い明日の話です。残された時間を考えると、相当に急がないとなりません。

 ただし、「イージーライド」が実用化すれば、大きなビジネスに成長することは間違いないことでしょう。だからこそ、DeNAが参戦しているのです。そして、日産は大企業ですが、あくまでも自動車メーカーですから、新ビジネスの開拓は苦手分野。次世代の新ビジネスと求めるDeNAと、次世代モビリティを提供したい日産。2社の目論見が合致したのが「イージーライド)」だったのです。