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日産の次世代自動運転技術「プロパイロット2.0」
5月16日、日産は次世代の運転支援システム「プロパイロット2.0」を発表した。今秋からスカイラインに搭載し、その後は搭載車種を拡大し、世界展開を考えているという。ちなみにスカイラインは現行モデルのマイナーチェンジになるようだ。
日産はこれまで単眼カメラを使った「プロパイロット」を2016年に「セレナ」に初採用し、世界7モデルに展開、累計35万台販売してきた。これまでの「プロパイロット」は、いわゆるステアリング・アシスト付きのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)であり、自動運転技術で言えばレベル2に相当する。そして次世代となる「プロパイロット2.0」は、当然のことながら、その機能がさらに進化していた。
「プロパイロット2.0」の最大の特徴は、「ハンズオフ」できることだ。いわゆる「手放し運転」が許される。もちろん、いつでもどこでもできるわけではない。大前提は、ドライバーが監視役を務め、いつでも運転操作を交代できる状態であること。つまり自動運転技術レベルでいえば「プロパイロット2.0」は、レベル2に該当するものであった。
そして、「ハンズオフ」可能なシチュエーションは、高速道路の本線、同一車線上となる。ジャンクションやトンネル内、急なカーブ、料金所や合流地点などは不可なので、事前にシステムから警告が出て、ドライバーがハンドルを持って運転操作を行なう。車線変更のアシストも行なうが、このときもハンドルに手を添える。ドライバーを監視する機能があって、居眠りやよそ見をしており、警告されても監視体制に戻らないようであれば、最終的に緊急停止機能が働くという。また、法定速度を検知する機能を備え、「ハンズオフ」走行時は法定速度内をキープする。
「ハンズオフ」といえば、すでにBMWが新型「3シリーズ」などに搭載すると発表しているが、BMWは「時速60㎞以下」であり、主に渋滞時がターゲットになる。一方、日産の「プロパイロット2.0」は「制限速度内」で、通常走行が主な使用状況。通常走行時の「ハンズオフ」という意味では、「プロパイロット2.0」が世界初となるのだ。
「プロパイロット2.0」を実現させる基本の技術は「センサー」「マップ」「ドライバーモニター」の3つだ。センサーは3眼カメラ(画角150度/54度/28度)、4個のアラウンドビューモニターカメラ、フロントレーダー、4個のサイドレーダー、12個のソナーを備え、道路の白線、標識、周辺車両を検知する。3眼カメラは、発表会で使われた説明写真を見るかぎり、モービルアイ社の製品のようだ。
マップとして、高速道路の形状をcmレベルでデータ化した3D高精度地図データを使用する。データには、道路のレーン数や形状だけでなく、速度標識や案内標識の情報も含む。走行中は左右でcm単位、前後で数m単位の誤差内で車両位置を認識するという。カメラが道路の白線を見失ったときは3D高精度地図データが補完するそうだ。3D高精度地図データは、正確性が重要になるため、年に3~4回のアップデートがコネクテッド機能を使ってなわれる。つまり、通信機器を備えた車両というのが「プロパイロット2.0」の条件となるのだろう。そして、室内のダッシュボード上にはドライバーモニターを設置。これで「ハンズオフ」時のドライバーの状態を監視するのだ。
日産の開発陣曰く、「プロパイロット2.0のシステムは、現在のところ世界最高レベルである」という。確かに、旧世代の「プロパイロット」と比べると、内容は非常に高度化されており、それに見合うだけの精度の高さも実現しているはずだ。しかし、一方で「だからこそ、この先は時間がかかる」とも言う。普通に考えれば、「この先」というのは自動運転レベルでいう「レベル3」だろう。システムが稼働しているときは、ドライバーが「ハンズオフ」だけでなく「アイズオフ」も許されるのがレベル3だ。しかし、それを実現するには、もう少し時間がかかるということなのだろう。レベル3のハードルは、やはり相当に高いということ。もう少し、待つ必要があるようだ。