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【日産 アリア】発売の1年も前に発表、負のイメージの払拭とテスラ追撃を狙う
日産自動車は7月15日、クロスオーバー形の新型電気自動車(EV)『アリア』を世界で初公開した。そのオンライン発表会で内田誠社長は「日産車の魅力がすべて詰まっている。日産の歴史の中で新たな扉を開くモデル」と自信満々に紹介した。しかし、発売は2021年半ばだ。
日産が新型EVを投入するのは2010年12月の『リーフ』以来、10年ぶりのこと。その10年間にEVのビッグデータを活用したノウハウがいろいろ蓄積されたという。もちろんその中には厳しい意見もあった。そういった意見を開発に生かし、アリアでは全く新しいEV専用プラットフォームを一からつくり上げたという。
モーターは小さく、バッテリーも薄くなり、空調ユニットも車内から前方のモータールームに移動。これによって、車体サイズはCセグメントでも、1クラス上に相当する広々としたキャビンを実現できたそうだ。
また、アリアは前輪と後輪の2つのモーターを1万分の1秒単位で制御する最新技術を採用し、『フェアレディZ』に匹敵する加速性能を誇るという。航続距離も最大610kmとなっている。
しかし、その10年間にEV市場は大きく変わり、EVの先駆者だった日産の存在感は年々薄れていった。代わって主役に躍り出たのが米テスラで、今や時価総額でトヨタ自動車を抜いて業界トップに躍り出ている。2020年のEV販売台数にしても、テスラがトップで、日産は中国勢や欧州勢の後塵を拝しているという状況だ。
また、業績も販売不振と設備の過剰などによって、2019年度は6712億円の最終赤字を計上。1990年代末以来のピンチを迎え、2023年度を最終年とする「事業構造改革計画」でリストラを進めている。このように、最近の日産には暗い話題ばかりが先行していた。
発売の1年も前にアリアを発表したのには、そういった日産の暗いイメージを払拭する狙いとテスラ追撃の狼煙を上げるという意味合いがあったと言っていいだろう。同時にブランドロゴも刷新する発表も行っている。そのおかげで、15日の東京株式市場で日産株は前日比約7%高となった。16日も日産株は午前中に前日よりも5%以上も高くなっていた。また、6月末に日本で発売した『キックス』は出足の販売が好調だという。
「日産は今後、年間100万台以上の電動車を販売していく。そんな新しい時代の日産を象徴するのがアリアだ」と内田社長は強調する。価格的に500万円以上と、爆発的に売れる可能性は少ないが、『GT-R』がそうだったように、アリアは電動化を象徴するクルマとして日産再生のカギを握りそうだ。