プレゼンテーション「メルセデス・ベンツEQC プレス発表会」

メルセデス・ベンツ日本株式会社 / 技術

メルセデス・ベンツEQC プレス発表会

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メルセデス・ベンツのEV戦略! 初の市販EV「EQC」がSUVである理由とは? 【EQC開発秘話・ミヒャエル・ケルツ氏インタビュー】

“95%の人たちのニーズを満たす、メルセデス・ベンツEQCの実力

メルセデス・ベンツのEV戦略! 初の市販EV「EQC」がSUVである理由とは? 【EQC開発秘話・ミヒャエル・ケルツ氏インタビュー】”

ミヒャエル・ケルツ Michael Kelz ◎ 1959年10月17日、ドイツ生まれ。ダイムラーAG 全モデル開発 ディレクター Eクラス/CLS/GLC/EQC開発責任者。
“メルセデス・ベンツEQCの開発者であるミヒャエル・ケルツ氏が、日本の「EQCプレス発表会」登壇のために来日し、本誌を含むモーター系メディアの取材に対応した。そこから、おぼろげながらもメルセデス・ベンツのEV戦略が見えてきた。

「世界で最も成長しているカテゴリー」への挑戦

“−−−−−− 他ブランドのEV(電気自動車)は、独自の充電システムを採用しているが、メルセデス・ベンツのEQCはどう対応していくのか?

「メルセデス・ベンツは、欧州では複数の自動車メーカーと共同で “イオニティ(IONITY)”という急速充電ネットワークの会社を設立し、各地に充電ステーションを作っています。将来的にEVが広く普及していくことを考えると、自動車メーカーが独自に充電ステーションを作ることは難しくなりますので、メーカーの枠を超えて標準化していく方向で進んでいくことになります」

−−−−−− メルセデス・ベンツ初の市販EVがSUVボディのEQCとなった理由は? ジャガーEベイスやテスラ・モデルXといった、他メーカーのEVモデルの影響があるのか?

「SUVモデルからスタートしたのは、世界で最も成長しているカテゴリーであり、世界中の多くのお客様を一台で満足させられるからです。もうひとつの理由は、利便性を高めるモデルであることです。街中での利用では、全長が短く、車高が高いクルマが好まれています。競合との比較や差別化という点では、内燃のクルマと同じ感覚で操作でき、クラシックなメルセデスの魅力を併せ持っているという点です。具体的には、静粛性、乗り心地の良さ、洗練されたスタイル、そしてバリューのある価値を提供する、ということです」

−−−−−− 他社では電気を有効活用するような複合システムが投入されているが、メルセデス・ベンツはどのように考えているのか?

「開発時には、家の補助電源化など色々と検討しましたが、今回のEQCにおいてはそのようなアイデアは採用していません。その理由としては、世界の市場を見渡した場合、インフラの整備が特殊であること、そしてエネルギーのサプライヤーとの関係にも難しい点があるからです」”
“−−−−−− 乗り味や走りに関して、どのような開発イメージで味付けしたのか?

「メルセデス・ベンツの典型的なドライブフィーリングを実現しています。差別化したい要素としては、サスペンションやステアリング、静粛性といった部分がありますが、内燃であってもEVであっても、ドライブトレインの違いで開発が異なるものではありません。その結果、EQCに乗っても、これまでのメルセデス・ベンツの乗り味が堪能できます。さらに付け加えると、快適性に加えて、CLSにも似たスポーティなドライブ感覚を取り入れています」

−−−−−− EQCの開発において、EVならでの難しさはあったか?

「EQCは四輪駆動モデルでありますが、アクセルに対する反応が速いという点が挙げられます。EVはアクセルに対して俊敏に反応して加速するため、トルクを制御するトルクマネージメントシステムを投入しています。これは、伝統的なESPよりも、かなり強靱なシステムとなっています」”
“−−−−−− EVは大きくて重いバッテリーが車両重量増となるが、EQCのパッケージングにおけるコンセプトは?

「ふたつの側面があるかと思います。EVは一般的に考えると、たしかに車両重量は重いと言えます。メルセデス・ベンツでは、電力を回収する独自のシステムを搭載しており、車両の重さによって効率性を高めるようにしています。残念ながら日本仕様には非搭載ですが、欧州仕様ではマッピングまでをカバーするような、より高度なシステムを採用しています。もうひとつの重さに関しては、衝突性能についてです。バッテリーそのものに衝突保護システムを搭載し、特に側方からの衝撃に強くなっています。余談ですが、乗り心地の点においては、重量は重い方が有利です(笑)」

−−−−−− インテリアに採用した、これまでに使ったことのない、まったく新しい素材とはどんなものか?

「それは3つあります。ドアの内張りにはとても柔らかくて肌触りの良いマイクロクラウドを採用し、インストゥルメントパネルにはスペースラックスというメタリックな素材を用いました。もうひとつは、インテリア全体を張り巡らせた特殊なメタル素材を採用しています」”

8年間/16万km保証は、常時100%充電の設定

“−−−−−− EQCは一回のフル充電で400kmとなっているが、他社のEVも400kmが中心である。欧州では、EVをどのように使うのか?

「ご存知のように、実際には気温や運転の仕方で数値は変わってきますし、冬場でヒーターを使用やストップ&ゴーが続くような走行が続く時など、状況によって大きく変化します。日常的な使い方では、自宅の保管時にフル充電ができますが、長距離ドライブ時には急速充電で80%までの充電となります。つまり、95%の人たちのニーズを満たすレベルにあると考えています。残る5%がどういった要素かと言えば、超長距離を走行するケース、そしてトレーラーなどを牽引することができない点です。また、年間15万km走るようなユーザーには勧めませんが、そうでなければ良いチョイスだと思います。私もEQCを愛用していますが、2時間半毎に休憩できるので、家族からも喜ばれています」

−−−−−− 前後モーターの仕様を変えた理由は? 

「前後のモーターは、ほぼ同じものです。唯一の違いはワーキングポイントの差となっています。通常はフロントモーターを中心に駆動しますが、高速道路など大きなパワーが必要なときにリヤのモーターが動き始めます。このように制御している理由は、航続距離を伸ばしたい、ということです。つまりフロントモーターを補うリヤのモーターはフロントに対してパワーを追求しているのです」

−−−−−− ズバリEQCの最大の魅力は?

「EQCはエミッションフリーのモデルであることです。静かで快適、そしてスポーティという3つの要素が高次元でバランスしています。もうひとつはEVならではの快適装備として、乗車する前に冷暖房のスイッチをオンにできることです」”
“−−−−−− バッテリーはシリンダー型ではなくパウチ型を採用した理由は? また、想定している充放電サイクルと、その寿命は?

「バッテリーの密度を考えてパウチ型を選択しました。寿命については、使い方で大きく変わってきますが、8年間、16万kmに設定しています。また、充電に関しては、ヘッドユニットでオプション設定ができます。常に100%フル充電すると寿命が短くなってしまうので、充電時にどれだけチャージするかを選べるのです。80%や90%に制限すれば、バッテリーの寿命を延ばすことができます。ちなみに、8年間/16万km保証というのは、100%充電を繰り返した場合の設定となっています」

−−−−−− ドライブモードに回生モードが4段階あるが、それぞれの減速Gは?

「D–、D-、D+、Dの4つを設定しています(編集部注/欧州仕様には「DO」(ディー・オー)があるが、日本仕様には設定されていない)。減速レベルについては、路面状況に影響されるので公表をしていません。強い回生ブレーキが利くので、ワンペダルフィーリングの走行が楽しめます。一般的なオートマチック車のドライブは、Dモードということになります。参考までに、ブレーキランプが点灯するのは、D–に入ったあとの0.35Gの段階です」

−−−−−− 前後のトルク配分は? また、左右のトルクベクタリングができるか?

「前後のトルク配分については、ダイナミックセレクトレバーで変化します。“スポーツ”を選ぶと、リヤモーターが駆動するので、4輪駆動で走行できます。EQCに搭載しているモーターはふたつなので、左右のトルクベクタリングはできません。前後モーターのトルク配分とともに、左右はブレーキで走行モードを調整しています」

−−−−−− ありがとうございました。”