プレゼンテーション「XC40 Recharge Plug-in Hybrid T5 Press conference」

ボルボ・カー・ジャパン株式会社 / 技術

XC40 Recharge Plug-in Hybrid T5 Press conference

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【全SUV電動化、完了】ボルボのECV入門、「XC40リチャージ」に試乗してみた

ボルボの小型SUV、XC40に「リチャージ(Recharge)」が登場。PHEV車といっても、国産とは考え方が異なるようです。あわせて、ボルボが日本販売する全SUVモデルから、内燃エンジンだけの車種がなくなりました。

もくじ

ーRecharge Plug-in どんなクルマ?
ーCセグPHEVという難ポジション その戦略は?
ーメカニカルなノウハウあっての“インテリジェントな”PHEV
ー限りなくエンジンの存在感が希薄に PHEVの先には…
ーXC40リチャージ・プラグイン・ハイブリッド スペック

Recharge Plug-in どんなクルマ?

よく野球は「調子が悪いなりに試合を組み立てられる先発(ピッチャー)」が重宝されるが、欧州車はやっぱりサッカー的なロジックで作られているのかもしれない、そう思った。

ボルボが新たに発売したPHEVモデル、「XC40リチャージ・プラグイン・ハイブリッドT5」のことだ。

サッカーは基本、ホーム&アウェイ方式で得失点差を争うので、悪いなりの時に失点し過ぎて傷口を広げないことが肝要になる。

「ボルボXC40リチャージPlug-inハイブリッドT5インスクリプション(今回の試乗車の正式モデル名)」に乗ってもっとも感心したのは、車格に対して直3のガソリン1.5Lターボという、けっこうなダウンサイジング・ターボを組み合わせていること。

しかも180ps/27.0kg-mという、ハイチューンかつ高効率ユニットであることに、痛く感じ入ってしまった。

ようするにPHEVは、バッテリー残量がゼロ近くで長距離走行する時は、余分な重量物を載せた効率の悪いICE車に成り下がるもの。満充電で出かけた往路は好燃費で、それこそホームゲームのヨイヨイ状態だが、最大航続レンジを超えての往路こそがじつはアウェイの洗礼で、できるだけ失点を食い止めたい守りの時間帯。
そうなった時間帯の、XC40リチャージの守備の固めっぷりというか、燃費を落とさない&動力性能の確保ぶりが、お見事なのだ。

3名乗車で、ピュア(EV走行)モードやハイブリッド(デフォルト)モードの時は18~16km/Lはあった直近の平均燃費が、むろん落ちるものの、14km/L後半にとどまる。

カタログ値では15.1km/Lだから、規定通りのパフォーマンスといえる。それでいて加速が鈍るとか軽快さが失われるといったマイナスフィールはない。苦しい時間帯に守備的ボランチが入ったような心強さなのだ。

CセグPHEVという難ポジション その戦略は?

逆に国産のPHEVだと大排気量エンジンが組み合わされているため、こうはいかない。

EVモードでの最大航続距離はなるべく長く、バッテリー残量がゼロでもレスポンスや瞬発力まで欠けることのない動力性能を確保、という方向性は一緒だが、先発から中継ぎにクローザーまで、全局面で似たタイプに投げさせている感覚が強い。

まぁ元より国産PHEVは出先で急速充電すればいい、という考え方ではある。

逆にボルボは、電欠がありうるEVの方がPHEVより脆弱なため、急速充電の場と機会は譲るべしという立場だ。二次電池として家庭に給電する機能もない。

それは乗り手に急速充電の月々プランなど、新たな負担やタスクを課さない方策・方向性でもあるし、自動車社会で動力源の電化比率を高める(=CO2排出削減)方向に進む欧州では、少なくとも多機能すぎるよりも理解されやすい。

どちらが優れているとはいわないが、30分枠が終わった瞬間に急かしてくる「急速充電ポリス」的な殺伐感が、「充電コミュニティ」を歪ませている現状、急速充電インフラに拙速に大勢を誘導し過ぎるのもバランスが悪いのだろう。

つまり製品仕様にしてもハードウェアにしても、XC40リチャージには明確な戦略が感じられる。

これまで欧州Dセグ以上のクラスこそPHEVは増え続けていたが、売れ筋かつ生活アイテムであるCセグという車格だと、いっそEVの方が有利か、メーカーは悩むべきところでもある。実際、同セグ内のPHEVを見渡しても、モデル末期のVWゴルフGTEか、BMW 225 XE iアクティブツアラーとミニ・クロスオーバーPHEVぐらいしかないのだ。

メカニカルなノウハウあっての“インテリジェントな”PHEV

XC40リチャージPHEV T5は、先行するXC90やXC60といったSPAプラットフォームよりひと回り小さなCMAプラットフォームに基づくが、PHEVとしてのノウハウが多々活かせたことは察せられる。

駆動方式はFFでAWDではないが、センタートンネル内にバッテリーを収めた基本レイアウトは踏襲し、ICE版のAWDより車重は100kgほど増えたが、前後重量配分は変わらぬ約60:40だ。

バッテリー容量は10.91kWhで、SPAのPHEVの11.8kWhの9割強ながら、バッテリー重量は約113kgから約94kgと約17%も軽い。セルの構成を変えることで、車格に合わせて必要電圧を下げつつ運用エネルギー量をも最適化している。

バッテリーからの電力はインバーターを介して、トランスミッション一体化の電気モーターが前車軸を駆動する。

トランスミッション自体はツインクラッチ方式で、ボルボ社内の新開発による「7DCT-H」だ。1.5Lターボの動力は1-3-5-7速の奇数系列に、電気モーターのそれは2-4-6速の偶数系列に、それぞれのクラッチを介して伝わる。実際、DCTの変速動作のシームレスさが、そのままICE-電気モーター間の切替のスムーズさに置き換えられている、そんな感触だ。基本的にEV状態での発進は2速、電気側で繋がるが、よりトルクやパワーの要るICEとの協調制御では双方のクラッチがエンゲージされる。

首都高などある程度の速度域で走って、アクセルを踏み込んで負荷を増した時にようやくエンジン音が感じられる程度。コースティングとEV走行への切替があまりにスムーズなので、気がつくピレリPゼロの転がり音だけが耳をくすぐる、そんな調子だ。

限りなくエンジンの存在感が希薄に PHEVの先には…

そう、PHEVだというのにエンジンに感心させられたが、実はエンジンは最後の手段でしかないような扱い、それがXC40リチャージのユニークなところだ。

エンジンと電気モーターの合計出力262psのうち、電気モーターは82psで1.5Lターボが180ps、トルクはそれぞれ16.3kg-mと27.0kg-mあるので、走行中のどのような局面でも動力性能として不満はない。ややステアリングフィールとして中立付近が落ち着かないところはあったが、それまでのボルボらしからぬヤングでアクティブだったXC40が、すっかり洗練された大人のクルマになっていたことにも驚く。

オレフォスのクリスタルによるシフトの握りも、「~風」のなんちゃって素材が一切使われない本物のアルミやレザーやウッドによる内装など、最新世代のボルボとして欠けたるところがない。

バッド・サプライズのない燃費、静粛性が高くて軽快なフットワーク、穏やかに落ち着けるし「いいモノ感」に満ちた内装と、大ぶりで座り心地のよいシートに身を落ち着けていると、動力源がどちらなのかは、本質的な問題ですらなくなってしまう。

ちなみに今回の試乗車ではまだ「INSCRIPTION」となっていたが、「RECHARGE」という2021年式の市販モデルから採用されるモデル名にも触れておこう。
欧州ではコンセントに繋いで充電するPHEVかEVのことを、化石燃料の燃焼かブレーキ回生でしか充電されないハイブリッド車と分けて、「ECV(エレクトリカリー・チャージャブル・ヴィークル)」として分類している。

ようは自動車社会が電化された次はコンセントの向こう、太陽光か風力か水力か地熱か、あるいは石炭や原子力や火力かもしれないが、何からエネルギーを得て走っているか、それが問われるということだ。

入門用ECVとしてつまり、XC40リチャージはソツなく完成度が高いだけでなく、先々へキレイな放物線を示しているというか質の高いフィードとなりそうな、そんなファンタジスタぶりが光る。

XC40リチャージ・プラグイン・ハイブリッド スペック

ボルボXC40リチャージ・プラグイン・ハイブリッドT5インスクリプション

価格:649万円
全長:4425mm
全幅:1875mm
全高:1660mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTC):14.0km/L
CO2排出量:166g/km
車両重量:1810kg
ドライブトレイン:直列3気筒1476cc+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力(エンジン):180ps/5800rpm
最大トルク(エンジン):27.0kg-m/1500-3000rpm
最高出力(モーター):82ps/4000-11500rpm
最大トルク(モーター):16.3kg-m/0-3000rpm
ギアボックス:7速DCT
乗車定員:5名