プレゼンテーション「新型トヨタ カムリ発表会」

トヨタ自動車株式会社 / 技術

新型トヨタ カムリ発表会

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トヨタ、セダン復権を期して全面刷新した“BEAUTIFUL MONSTER”新型「カムリ」発表会 「『オールニューTNGA』でゼロから造り上げた」と吉田プレジデント

 トヨタ自動車は7月10日、東京 お台場にあるアミューズメント施設「メガウェブ」で新型「カムリ」の記者発表会を開催した。

 新しいカムリは、TNGA(Toyota New Global Architecture)に基づいて開発された新エンジン「ダイナミックフォースエンジン2.5」を進化型のハイブリッドシステムである「THS II」と組み合わせ、ミドルクラスセダンとしてトップレベルとなる33.4km/LのJC08モード燃費を実現。全車2WD(FF)車で価格は329万4000円~419万5800円。このほかの詳細は関連記事の「トヨタ、TNGA新エンジン『ダイナミックフォースエンジン2.5』搭載の新型ハイブリッドセダン『カムリ』」を参照していただきたい。

「わくわくドキドキするクルマをもう1度世に出したい」と吉田プレジデント

 新型カムリの発表会では、最初にトヨタ自動車 専務役員 Mid-size Vehicle Company プレジデント 吉田守孝氏によるプレゼンテーションが行なわれた。

 吉田氏はまず、新型に生まれ変わったカムリに対する思いをコメント。このカムリという車名が、英語で王冠を意味する「クラウン」、ラテン語で花冠を意味する「カローラ」に続くモデルとして、日本語の「冠」をルーツにしていると解説。カムリの前身である「セリカ カムリ」が登場した1980年に、吉田氏は自身がちょうどトヨタに入社したばかりのころで、“セリカのセダン版”という位置付けのセリカ カムリのなかで、とくに「2000GT」は「まさに羊の皮を被った狼」だったと表現。入社直後だった自分にとっても憧れの1台だったと振り返った。

 また、1980年当時は社会からクルマが大きく注目されており、スポーツカーやスペシャルティカー、デートカーと呼ばれるジャンルのクルマが誕生しており、トヨタでも「ソアラ」「セリカ」「チェイサー」「MR2」といった“わくわくドキドキさせられるクルマ”が数多くあったと語り、このあとに紹介する新型カムリは、若い新規ユーザーはもちろん、吉田氏自身のように1980年代のカーライフを謳歌した人にも乗ってもらいたいクルマであり、「あのときのように、もう1度ハンドルを握る歓びを味わっていただきたい。かっこよくて走りもいい、わくわくドキドキするクルマをもう1度世に出したいという思いでこのカムリに取り組んでまいりました」とアピールした。

 さらに吉田氏は「かっこよくするためには車高もフードも低いほうがいいし、タイヤは四隅に配置したほうがいい。そのうえで気持ちいい走りを実現するために、低重心のパッケージやパワートレーン、サスペンションなどすべてを一新したい。やりたいことは山ほどありましたが、これまではどこかで妥協をしてきました。そんな状況を大きく変える原動力になったものが2つありました」。

「1つめは、“もっといいクルマづくり”に向けた『TNGA』、Toyota New Global Architectureでした。TNGAは一昨年に発売した『プリウス』から商品化が始まりましたが、新型カムリではさらに進化させ、プラットフォームからエンジン、トランスミッションに至るまで、『オールニューTNGA』でゼロから造り上げることができました。このようにゼロからクルマを造り上げる機会に恵まれることは、そうはありません。エンジニアにとって、いや、仕入れ先まで含めて開発に関わったすべての人にとって非常にやりがいのあるプロジェクトだったと思います」。

「2つめは、昨年から採り入れた『カンパニー制』です。従来は企画、開発、生産技術、工場など、機能を中心にして組織が構成されていました。これが車両軸のカンパニーに集約され、組織の壁がなくなって意思決定や実務執行が速くなりました。さらに、カンパニーの1人ひとりが『もっといいクルマを造ろう』という意識に変わり、カンパニーが一丸となって情熱を持ってクルマづくりに邁進できる体制になりました」と紹介。そのように開発された新しいカムリを「かっこよくて走りもわくわくドキドキさせられる、そして魂のこもったクルマに仕上がったと思います」と吉田氏は表現している。

 最後に吉田氏は「しかし、母国の日本や北米市場では、正直なところセダン市場が盛況とは言えないのが現状です。『なんで今、セダンなの?』と思っていらっしゃる方も少なくないと思いますが、みなさんにぜひ新型カムリを見て、乗ってください。必ずや『セダンだからこそ実現できた美しいスタイリングと気持ちいい走り』を体感いただけると信じております。そんな新型カムリを1人でも多くの人に見て、乗っていただきたい。そう考え、これまでのカローラ店1チャネルでの販売から、トヨペット店、ネッツ店も加えた3チャネルでの併売としました。この新型カムリでもう1度セダンを輝かせたい、セダンの復権を目指しております。新型カムリには、数字だけでは決して語ることのできない我々の魂が込められています。1人でも多くの人に乗っていただき、1人でも多くの笑顔をいただければ幸いです」とコメントした。

新型カムリは「BEAUTIFUL MONSTER」と勝又チーフエンジニア

 吉田氏のプレゼンテーション終了後、暗転したステージに新型カムリに乗った開発責任者、トヨタ自動車 Mid-size Vehicle Company MS製品企画 チーフエンジニア 勝又正人氏が登場。「この新型カムリ、いかがでしょう。『いやいや、これはもうカムリじゃないよね』『理屈抜きにめちゃめちゃかっこいいね』、そんな風に言っていただけるクルマを目指して開発しました」と語り、勝又氏は新型カムリの車両解説をスタート。

「これまでのカムリは、北米市場を中心に『ホワイトブレッド』、つまり『食パン』と評されてきました。これは『なくてはならないクルマ』『安心できるクルマ』といった意味では大変にありがたいニックネームです。その結果、おかげさまで全米の乗用車市場で15年連続No.1につながったと思います。ただ、一方では『いいクルマだけど、わくわくドキドキしないよね』という意味でもあります。これではまずい、このままでは絶対にまずい。我々自身、そしてカムリ自身が大きく変わらなければ大変なことになる。そんな『白い危機感』が、前例のない変革、『unparalleled change』という合い言葉を生みました。『カムリを変えるためにはなんでもする』、そんな不退転の決意がこのカムリには込められています」と開発時の意気込みを勝又氏は紹介。

 そのように開発した新しいカムリの詳細では、「理屈抜きでかっこいいクルマ」を目指しつつ、その実にしっかりと理論立てて開発を行なっており、全体のプロポーションを低く抑えるため、ボンネット下にあるエンジンなどすべての部品をコンパクトに作り直し、低く配置できるよう再設計しているが、これは吉田氏のプレゼンテーションでも紹介された「オールニューTNGA」の導入があったからこそ実現できた千載一遇のチャンスだったと勝又氏は語る。このほかに外観では、低いベルトラインによって4つのタイヤの存在感を強調し、シャープなキャラクターラインによって新型カムリのデザインキーワード「官能的な動感と知的な洗練」を表現しているという。

 また、ルーフを後方まで延長することでカムリ独自の伸びやかなキャビンをアピール。車高を低く抑えたことで、とくに後席の空間が犠牲になっていると思われがちなところだが、前席、後席ともに従来どおりのスペースを確保していると勝又氏は紹介し、さらにただ広いだけでなく、インパネも内部のエアコンなどの小型化によって低く抑え、ドアミラーをドアパネル側に移動させることなどの工夫でドライバーズシートからの開放感ある視認性を確立。これにより、運転席に座った瞬間から爽快な走りを予感させるようになっているという。

 もちろん、演出面だけでなく、オールニューTNGAでは走行性能自体も徹底して磨き上げ、意のままの走りを実現していると勝又氏は強調。低重心パッケージが走行面の基本性能を飛躍的に高めていることに加え、リアサスペンションにはダブルウィッシュボーン式を新たに採用。ボディやステアリング関連の剛性アップも実施して運動性能を向上させたほか、パワートレーンにはゼロから新規開発した「ダイナミックフォースエンジン2.5」と、新世代となるハイブリッドシステムの「THS II」を組み合わせ、モーターならではの中間加速、アクセルペダルの操作にダイレクトに反応する気持ちのいい走りを実現しているという。また、このパワートレーンでは最大熱効率41%を達成しており、JC08モード燃費で33.4km/Lを実現したと勝又氏は語り、これはクラストップクラスであるとアピールしている。

 このほか、安全装備として歩行者まで認識できる衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備しており、さらに駐車場などで後退するときに後方を横切るクルマなどを検知して自動的にブレーキを作動させる「リヤクロストラフィックオートブレーキ」をトヨタブランドで初採用していることを紹介した。

 最後に勝又氏は「これまでカムリは、数値で言い表わせるような機能的な価値についてはご評価をいただいていました。ただ、これからは機能的な価値だけではお客さまに買っていただけなくなる。意味的な価値、例えば『理屈抜きでかっこいい』『意のままの走り』といった、お客さまの心に直接訴えかける価値を備え、それが官能のレベルにまでたどり着いた姿を目指す必要がある。その結果が今回の新型カムリです。前例のない変革を遂げた新型カムリをひと言で言い表わす言葉は『BEAUTIFUL MONSTER』です。スタイリングも、ドライビングも、美しさと力強さを合わせ持つのが新型カムリです」と締めくくった。

「カムリのイメージは『帰国子女』」とテリー伊藤さん

 また、発表会では新型カムリの魅力をPRする「カムリアンバサダー」に演出家のテリー伊藤さんが就任したことが発表され、開発責任者である勝又氏とのトークセッションが行なわれた。

 これまで多数のクルマを乗り継いできたというテリー伊藤さんだが「実は僕、一番最初に買ったクルマは、18歳のときのカリーナだったんですよ。それから少し経ってセリカが出て、そのあとにカムリが出た。その当時の僕はまだ若かったんで、セリカの方がいいなと思っていたんですが、カムリはどちらかというと大人のイメージもあったので。でも、僕も大人になって、カムリがどんなイメージになったかというと『帰国子女』だと思うんです。または『メジャーリーグで活躍している日本人選手』。どこかバタ臭いイメージがあって、それに国際感覚を持っている。欧米やいろいろなところにいって向こうの人とフレンドリーに会話して、日本に戻ってきても楽しげにしゃべってくれる。そんなイメージのクルマ。これは本当にこれからの時代に合った、新しいニューセダンだと感じています」とコメント。

 また、ステージ上の置かれたカムリに近寄って「僕が言うのも失礼かもしれないですけど、このへん(ドアパネル)のシルエットとか、これはそうとうにお金がかかってますよね。ねぇ勝又さん?」と勝又氏に問いかけると、勝又氏は「これはもう、大変でした」と笑いながら返答。これを聞いてテリー伊藤さんは「これは大変な努力が必要だし、トヨタさんじゃなければできないことですね」と分析した。