プレゼンテーション「トヨタ・ソフトバンク共同記者会見2」

トヨタ自動車株式会社 / 技術

トヨタ・ソフトバンク共同記者会見2

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神田敏晶(自社メディアを持たないジャーナリスト)

ソフトバンクとトヨタ『モネテクノロジーズ』AI自動運転×モビリティのミライ

KNNポール神田です。

先月は、ルノー、日産、三菱自動車のアライアンスとGoogleの提携発表があったが、本日は、日本でトヨタ自動車とソフトバンクが、新会社『モネテクノロジーズ』の発表をおこなった。

いつもトヨタの目前に立ちはだかるソフトバンク

トヨタ自動車は、2018年1月、自動車メーカーから、モビリティサービスカンパニーになると宣言した。

それから、トヨタ自動車が、カーライドシェア事業等の提携先を模索すると、必ずソフトバンクが登場することとなる。そう、ソフトバンクはライドシェア事業の大手のほとんどの筆頭株主になっていたからだ。ライバル企業に出資していくうちにすべてが手中に転がり込んでいるのであった。まさに投資タイミングの機会が最適なのだ。

ソフトバンクは通信会社というよりも、近年は投資会社としての活躍が目を見張る。それは、IoT時代を見据えた2016年のARMの買収を起点としている。

ARM買収の後に、幾多ものAI企業や、自動運転の為の半導体でNVIDIAなどへの出資、サービス事業への出資等は、点在としての出資ではまったく見えなかった『AI自動運転』に関する出資が、2018年には面としての『IoTの群戦略』として浮かびあがってきたのである。

また、ソフトバンクは、自動車メーカーとしてのGM(ゼネラルモーターズ)の自動運転『GMクルーズ』に22億5000万ドルの出資を行い、約20%の株を取得している(2018年5月)。さらに、昨日(2018年10月3日)には、ホンダがGMクルーズへ7億5000万ドル(約850億円)出資するとともに、今後12年に渡って事業資金約20億ドル(約2200億円)を発表した。

ソフトバンクの群戦略はチップセットのデザインの川上から半導体、AI ロボットテクノロジーから自動車メーカー、自動運転のライドから、自動物流のサービスの川下までの構図がまさにコンプリートするところである。まさに、GMとホンダという自動車メーカーの協業も成立したのである。

昨日まではGMとホンダとの世界が…今日からはトヨタも!

トヨタも2018年モビリティサービスの『プラットフォーマー』としてのサービス提携先を見渡すと、すべてにソフトバンクが登場している時代となっていた。トヨタの若手陣がソフトバンクと組まないと自分たちのミライもないと考えた。そこで提携なり共同事業会社を提案することとなるが、トヨタには、20年前の中古車販売でのソフトバンクからの『ネットディーラーズ』との提携話を自らの中古車販売の『GAZOO』で断った経験があった。

1999年、ネットディーラーズをソフトバンクへ事業売却した「ネットエイジ」はその事業資金を元に『ネットエイジマフィア』を形成する。

イグジットした会社も成長し、大きくなった…。次世代への進化を遂げるのもベンチャー投資の特徴なのだ。

トヨタからの提案に「驚いた!本当か!まじか?という気持ちだった(孫正義)」

すでに、GMクルーズに22億5000万ドルもの出資をしているソフトバンクに対して、トヨタの若手から事業の話がきた時に、ソフトバンクの孫正義社長は「まじか!?」と二度も驚いたそうだ。そう、孫の頭の中ではトヨタという会社は19年前の『ネットディーラーズ』の提携話の破談から、トヨタという会社の選択肢はなかったのだろう。むしろGMというパートナーを選んでいたからだ。そして、トヨタ自動車は、auブランドを展開するKDDIの主要株主でもあるので、ソフトバンクとは疎遠な関係の企業でもあった。

しかし、『モネテクノロジーズ』の事業アイデアは、単に自動運転だけでなく、『サービスプラットフォーム』としての事業会社だから、トヨタ側も『GMクルーズ』という自動運転の話よりも『AI』を軸にしたサービスで新たなパートナーシップとして、ソフトバンクを敵に回すよりは、あらたな群戦略に取り組んでもらいたいというストーリーになったのだろう。もちろん、ソフトバンク側もナンバー1のトヨタ、GMとの連携があれば、ルノー、日産、三菱とGoogleや、Appleという競合よりもよい優位な立場を作ることができそうだ。もはやスマートフォンの通信事業との競合よりも協業を選んだほうが次世代的には意味がある。

新会社の出資比率は、少しだけ、ソフトバンクの方が多かった。

ソフトバンク 50.25% トヨタ自動車 49.75%

何よりも、ソフトバンクとトヨタ自動車というジョイントベンチャーが誕生し、モビリティにおけるプラットフォームが世界を相手に動き出すという意味では、今日の共同発表は大いに意味のある日になることだろう。ソフトバンクは、かつて高速インターネットで、「スピードネット」というプロバイダーサービスを大手の東京電力とマイクロソフトと手がけたことがある。大手と組むことによってのデメリットもあるが、ソフトバンクの大風呂敷戦略とトヨタのモノづくりの歴史の出会いは、インターネットの次の時代をみすえた大きなうねりになりそうだ。

クルマを運転しない時代の新たな社会システム実現のチャンスになるのかもしれない。

2018年10月4日(木曜日)ソフトバンクとトヨタ自動車『モネテクノロジーズ』の共同発表の日。日本から世界を変える日となるか?