BUDINESS INSIDER
テスラから始まり、ソフトバンクとトヨタを結びつけたもの。豊田章男社長がこだわった「起業家精神」と「社会貢献」
2018年10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクが戦略的提携を発表した。共同出資の新会社「MONET Technologies(モネテクノロジーズ)」を設立し、年度内の事業開始を見込んでいるという。
トヨタグループは毎年1000万台以上を生産(うち約6割は海外生産)し、規模、収益性、将来性のいずれにおいても世界トップの自動車会社である。また、ソフトバンクグループも、通信、人工知能(AI)、投資戦略において、世界トップのIT企業の一つだ。時価総額で言えば、国内1位と2位の企業が手を組むことになる。
「ドアを開けると、必ず孫さんがそこにいた」
第4次産業革命の到来を前に、両社が手を携えたことは、製造業界やIT業界をはじめとする日本の産業界に、再び世界をリードできる日が来るかもしれないという希望をもたらしたのではないか。
AI、IoT技術がどれだけ進化しても、モノづくりというリアルの世界が必要なくなることはない。リアルの世界で勝てなくては、世界に勝てない。ソフトバンクの孫正義会長がトヨタとの提携を望んだのは、このリアルの戦いが最後は勝負を決めることを理解していたからだろう。
一方でトヨタの豊田章男社長は記者会見の壇上、ソフトバンクと組みたいと考えた理由について、「未来のタネを見抜く先見性、目利きの力にある」と述べた上で、「(未来のモビリティを作ろうと、先行するモビリティサービス企業の)ドアを開けると、必ず孫さんがそこに座っていた」と独特の表現で言い換えている。
「時代が両社を付き合わせた」
トヨタはモビリティの観点から、AIや自動運転の研究開発を続けてきた。
米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)出身でAI研究の第一人者であるギル・プラット氏をCEOに迎え、2016年1月に「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」を設立。同年5月には米ウーバーに、翌17年8月にはシンガポールのグラブに出資し、ライドシェアに関する知見も積み重ねてきた。
その後、2018年6月にはグラブに約1100億円、ウーバーには同年8月に約560億円を追加投資したが、その時点で両者の筆頭株主はソフトバンクになっていたのである。「孫さんがすでにそこに座っていた」という発言は、まさにそのことを指している。
いずれにしても、モノづくりの視点からAIを追求してきたトヨタと、AIだけでは世界には勝てないと考えてきたソフトバンクが、このタイミングで合流したことについて、孫会長は「時代が両社を付き合わせた」、豊田社長は「時が来た」と、ほぼ同じ意味合いの言葉を口にしていることが、この提携の必然性を象徴していると言うしかない。