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キーワードは「仲間づくり」 トヨタ、異業種連携で変革に挑む
2019年3月期の連結売上高が、国内企業で初めて30兆円を超えたトヨタ自動車だが、今後は車両の電動化や自動運転技術に巨額の費用がかかり、経営環境が厳しさを増すのは必至だ。豊田章男社長は8日の決算会見で、他の自動車メーカーや異業種との連携をさらに強化する方針を示した。巨艦の進路転換には時間を要することが道理だけに、社内での危機感共有も急いでいる。
「資源のない日本が単独で生きられないように、企業も単独で生きていけない。『仲間づくり』がキーワードだ」
会見で豊田氏がこう強調したように、トヨタは17年、マツダなどと電気自動車(EV)の基幹技術を開発する会社を設立した。電動車の電池に関してパナソニックと、MaaS(移動サービス)ではソフトバンクと提携した。今年に入り、ハイブリッド車(HV)の特許を開放すると公表したのも、生産・販売する仲間を増やすことで得意とするHVを世界で普及させる狙いがある。
背景には、技術開発を単独で進めるのではなく、基幹技術などを他社と協調することでコストを抑えるほか、異業種との連携で、自動車メーカーの持っていないノウハウに接近する狙いがある。
次世代技術がビジネスモデルの変革を促す中、豊田氏は「『トヨタは大丈夫でしょう』というのが一番危険な言動だ」と指摘。質疑で成功体験を持つ組織変革への妙案を問われると、「それがわかれば苦労はしない」と打ち明けた。
それでも、この日に公表した20年3月期の研究開発費は1兆1000億円と、前の期を500億円超上回る規模を計画する。小林耕士副社長は「このうち4割弱が次世代技術に関する費用。近いうちに5割に持って行く」と話した。豊田氏は「よいと思ったことはやってみる。間違ったとわかれば引き返す。やりながら考えることが重要だ」とも話したが、これはITベンチャーが新サービスの普及スピードを上げる手法に似ている。将来の米国のIT大手などとの“異次元の競争”を強く意識しているようだ。