プレゼンテーション「トヨタとNTT共同記者会見」

トヨタ自動車株式会社 / 技術

トヨタとNTT共同記者会見

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THE PAGE(独自媒体なしにてYahoo!ニュースより)

トヨタとNTTが会見 スマートシティー構想で提携(全文1) 広がるソフトウエアファースト

 トヨタ自動車と日本電信電話(NTT)は24日午後、都内で共同記者会見を開き、スマートシティー構想での提携を発表した。

※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは「トヨタとNTTが共同会見 「スマートシティー構想」で提携(2020年3月24日)」に対応しております。

非常に今、興奮している

司会:皆さま、長らくお待たせいたしました。ただ今より日本電信電話株式会社およびトヨタ自動車株式会社による共同記者会見を始めさせていただきます。まず本日の登壇者をご紹介いたします。日本電信電話株式会社代表取締役社長、澤田純でございます。続きましてトヨタ自動車株式会社代表取締役社長、豊田章男でございます。それではまず澤田よりご説明申し上げます。

澤田:ただ今ご紹介いただきました澤田でございます。本日は新型コロナの状況の厳しい中お運びくださいまして誠にありがとうございます。私どもトヨタ、NTTの資本業務提携について、非常に今、興奮しておりまして、私のほうからまずNTT側の考え方と背景についてお話をさせていただきたいと思います。

 コロナで本当に大変な状況で、不幸中の幸いではありますが、いわゆる在宅勤務が進むような状況になっております。ただ、ワーカー同士が協業しながらこういう隔離された中でお仕事をするというにはもう一段リモートワークの進んだ形が、イノベーションが要るのではないかと。つまり隔離状態と協働の状態を同時並立させる構造が必要ではないかと、このように考えております。同様な例が環境保護と経済や社会の成長にも見て取れます。両方実現しながらより良い社会をつくる、そういうようなイノベーションというのが求められていると、このように考えております。

住民や地域の社会基盤を構成

 昨今の状況を見ますと、このコロナの話が出る以前より、デカップリングという言葉、この中でグローバリズム、これのひずみが生じ、かつ、ナショナリズムの台頭、ぺけぺけファーストというような考え方、こちらのほうにシフトを始めている部分がございますが、今求められているのはこの双方を同時並立させる、パラコンシステントの考え方に基づく新グローカリズムではないかと、このように考えています。

 これを日本国の中に適用してみますと、今いろんな課題があります。少子高齢化をはじめ、地域のなかなか創生が進まない問題、いろんな都市問題、社会問題がございます。国を発展させながら世界を発展させ、かつ、同時に地域の住みやすさ、私たちにとって住みやすいまちを実現する、この同時並立の考え方、ここでやはり私たちはこれから将来に向かってスマートシティというものを広げていくべきだと。世界で、もう自動運転はじめいろんなことに取り組まれているトヨタと私どもNTTが連携をすることによって、住民や地域の社会基盤というものを構成していけたら、これが私たちが合意に達した資本業務提携の基本でございます。

 スマートシティは私どもから見ますと8個ほどの要素で考えられると思っています。NTT自身はB2B2Xというパートナーの皆さまと事業を広げていく、こういう考え方でスマート・シティ・プロジェクトを進めております。これは日本国政府が、あるいは経団連が言うようなSociety 5.0にもつながる動きだと考えております。8個の内容はインフラサイドからスープラ、いわゆる社会の上位サイドに至るまで、いろんな要素があります。モビリティから健康、医療、そういう部分まで。

 トヨタとNTTは、もう私どもから見てもモビリティの世界ナンバーワン企業はトヨタさんだというふうに考えておりまして、私どももその広がりをお手伝いできたらと。すでにもう自動車がコネクテッドな世界になっています。すなわち、コネクテッド、コネクトされる新しいスマートシティの中の要素として自動車が入ってきている。これをつないでいるのが実はICTなりソフトウエア、そういう考え方になります。

東富士から世界へ広げたい

 NTTといたしましてはスマートシティ、取り組み、例えば札幌、ラスベガス、千葉、横浜、福岡、さらにはサイバージャヤ、あとパートナープログラムも出させていただきまして、まちづくり用のCREをベースにした会社も整えてきております。さらに新しい再生エネルギーを用いた地域のグリッド、そしてウェルビーイング、地域創生支援。

 こういうような営みはしておりますが、コアとなる新結合、それが今回の提携だと私たちは考えております。トヨタとNTTがスマートシティの社会基盤を一緒につくり上げていく。これを東富士から世界へ広げたいと、このように考えております。長期的な営みになると、章男さんともお話をさせていただいておりまして、私ども相互に2000億円の相互出資も実施していこうと本日、決議をいただいたところでございます。

 スマートシティプラットフォーム、社会基盤をこのように呼ばせていただきますと、これは進化をし続けるプラットフォームだと。そしてパートナーの方と、もちろん私たちがコアですが、いろんな方に入っていただいて広げていく。さらには他都市、ほかの都市との連携、あるいは国がリードしていますような都市OSアーキテクチャ、これとの連携。グローバル規模で、こういうスマートなまちをつくってまいりたいと。

仮想発電所を置き、グリーンな電力を提供

 これを支える技術要素、通信サイドから見ますと5つ。IOWNと呼んでいます将来のネットワーク構想。ここでのオール光ネットワーク、デジタルツインコンピューティング、コグニティブファンデーション。3つ目が5Gです。今週からスタートさせていただきます。それと直流の再生エネルギー。さらにはデータマネジメント。IOWNは、もうすでに発表させていただいておりますが、その3つの要素で、電子から、エレクトロニクスからフォトニクスへ。デジタルからナチュラルへという世界をリードしようと考えております。

 5Gは、今日は深くはご説明いたしませんが、これらのコンピューターサイドをつないでいくキーサービスになる。さらには6Gへ向かっていく。そしてデータマネジメント。これは人流の把握と予測のシミュレーションを出しておりますが、トヨタとNTTは自動運転車でも提携をいたしております。Woven Cityの中では、そういうモビリティをどう見える化して、デジタル化をして、管理をして、将来を予測しながら、より良いまちづくりをしていくかと、そういうところにこういう技術要素を使わせていただきたい。

 再生エネルギーですが、基本的には地産地消。直流方式を用いながら、ためるということをトライしたい。仮想発電所を置きまして、グリーンな電力を提供していくようになる、そういうまちづくりをトライしたいと考えております。

コネクト、トラスト、インテグリティ

 最後に、この資本業務提携のベースにあるのは人です。1月8日の章男社長の社内での講演がございました。実は今でもYouTubeで見ることができます。40分ほどなんですが、私ももちろん見させていただきます。この中に多くの示唆がございます。全ての経営者が考慮していくべき、考えていくべきことが包含されていると思います。それは愛情であったり、公への貢献であったり、そしてインテグリティ、志、清廉な考え方です。非常に感銘を受けまして、この資本提携の基本、この方が率いておられる会社と私どもがご一緒できる、それによってより良い、より明るい未来と、このスマートシティを通じてですが、広げていきたいと。

 私どもの、この三角形の絵は真ん中に人を置きまして、下からコネクト、トラスト、インテグリティ、これを共通概念として、そういう会社になっていきたいという中期経営計画の絵です。これにまさにかなうのが今回のトヨタとの資本業務提携だと、こういうふうに考えております。明るい未来に向けて、とても期待と夢を個人的にも感じております。どうも、ご清聴ありがとうございました。

司会:続きまして、豊田よりご説明申し上げます。

ソフトウエアの位置付けが変化

豊田:澤田社長、ありがとうございました。豊田でございます。皆さまご承知のとおり、自動車産業はCASE革命により車の概念そのものが変わるとともに、人々の暮らしを支えるあらゆる物、サービスが情報でつながっていく時代に突入しております。つまり、私たちのビジネスを考える上でも車は単体ではなく、車を含めたまち全体、社会全体という大きな視野で考えること。コネクティッド・シティという発想が必要となってきております。

 こうした中で、今回NTTと新たな協業に取り組ませていただくことになりました。私からはトヨタがNTTと提携する理由を、私たちが直面している2つの変化の観点からご説明をさせていただきます。1つは、トヨタ自身が対応していくべきものとして物づくりにおけるソフトウエアの位置付けの変化がございます。従来の商品開発は、ハードとソフトの一体開発が基本でした。しかし、ソフトの進化のスピードがハードを上回る状況が出てまいりますと、一体開発では商品の性能や価値向上が、進化の遅いハードの制約を受けるという課題が顕在化してまいりました。そこで近年、開発の自由度確保と商品力向上のため、ハードとソフトを分離し、ソフトを先行して開発、実装するソフトウエアファーストの考え方が広がってきております。

 この成功例がスマートフォンです。スマートフォンの大きなモデルチェンジは、画面の大型化や超高精細有機EL画面の登場、折り畳める画面など、新しいハード技術の採用のタイミングで行われます。しかしスマホでは、そのタイミングを待たずに、同じハードでもOSやアプリの更新で新しい機能を拡張していけるわけであります。これを車づくりに当てはめますと、フルモデルチェンジはハードを更新するタイミングで車を買い替えていただき、その価値をお届けすること。マイナーチェンジなど、その他の改良はソフトを更新するタイミングでハードはそのままに、新しい機能、価値を提供することとなります。

車づくりを次のフェーズに変革

 分かりやすいのは、ソフトとデータが鍵を握る、高度運転支援機能などの先進技術です。ベースのソフトを先に実装しておき、リアルライフでデータを集めながら、AIをレベルアップさせ、ある段階でアップデートして機能を追加する、そんなことができるようになると思っております。車のマイナーチェンジがソフトウエアのアップデートという概念に変わってくれば、トヨタが持つハードの強みがさらに生きてくると思っております。

 トヨタのハードには3つの強みがあると考えております。1つは、耐久性の良さであるDurability。次に、交換部品の手の入りやすさを意味するParts Availability。最後に修理のしやすさであるRepairabilityです。ソフトが都度最新のものとなり、ハードをより長期間使用することになれば、この3つの強みがより発揮されることになります。実際、協業相手のMaaS事業者は、トヨタのこの3つの強みを評価してトヨタの車を選んでくれております。ハードの強みを生かし、ソフトウエアファーストの考え方も取り組んでいくことでトヨタの車づくりを次のフェーズに変革することが可能になると考えております。

 もう1つはトヨタだけでは対応することができないもの、車の役割の変化です。今から約10年前の2011年、東京モーターショーでトヨタはFun-Viiというコンセプトカーを出展いたしました。このときに私はスマホにタイヤを4つ付けたらこういう車になった、と申し上げました。走る、曲がる、止まるにつながる機能を加えると、車は新しい価値を生み出せると考えておりました。それから7年後、2018年1月のCESでe-Paletteを発表いたしました。e-PaletteはTRIやトヨタコネクティッドというソフトウエアのエンジニアたちが車をつくればどうなるかという新たな試みでした。

まちのプラットフォームづくり

 その次にe-Paletteを走らせるための道が必要だと考えて生まれた発想がWoven Cityです。トヨタにとってWoven Cityとは、ものの見方、考え方を180度変えていくいことを意味しております。車や住宅が先にあって、それをつなげていくという従来の発想から、上位概念は人々が暮らすまちであり、そこに車や住宅をつなげていくという発想に転換する。そのために仕事のやり方を大きく変革することだと思っております。これがトヨタも、まちのプラットフォームづくりに取り組む理由でございます。

 つながる化、IoT化により、車は個人の所有物、移動手段にとどまらず、社会システムの構成要素の1つとなり、果たすべき役割が変わってくると思います。例えば有事の際は非常電源になり、ハザードマップなどセンサーを通じて社会に役立つ情報を提供できる。さまざまな可能性が生まれてきております。

 それ故に車の進化は社会の進化と密接な関係を持つことになります。私は社会システムに組み込まれた車を最も上手に活用いただけるパートナーがNTTだと思っております。なぜならばNTTの事業は社会づくりそのものに直結しているからであります。社会を構成するさまざまなインフラはNTTが提供する情報インフラに支えられております。人間の体に例えますと、車や家は筋肉、骨。通信は情報という血液を流す血管であり、その中でもNTTは大動脈として毛細血管に至るまでの血液循環を支え、体全体を動かしているのだと思います。言い換えますとNTTは社会システムの根幹を担っているわけであります。

 このようにソフトウエアファーストの車づくりを実現し、まちという社会システムと結び付いた車の未来をつくっていくこと、これを会社規模で行うことが私の言う自動車をつくる会社から、モビリティカンパニー、すなわちモビリティに関わるあらゆるサービスを提供する会社にフルモデルチェンジするということになることであります。

NTTとの提携は必要不可欠で、ある種必然

 企業グループのフルモデルチェンジにおいてNTTは先駆者です。NTTはすでに会社規模で、ハードとソフトの分離を実行してこられました。当初、電話回線はアナログ通信であり、通信の切り替えは機械式接点による交換機だったと伺ってきております。その後、通信のデジタル化とともに、交換機がルーターに置き換わり、ソフトで通信の制御を行うようになってまいりました。

 さらに携帯電話により場所を選ばずどこでもつながる社会が実現され、通信は通話という機能を超えて新しいデータサービスやビジネスを生む基盤となりました。そこでNTTはグループ全体の事業構造をハード主体からソフト主体にフルモデルチェンジをし、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズやエヌ・ティ・ティ・データなどの通信基盤、情報処理基盤の構築や、その上でのソフト事業を担う会社をつくり、データサービスやソリューションまで幅広く取り組む総合情報通信企業としてイノベーションの加速に取り組んでこられました。

 現在はスマートシティやIOWN構想など、将来のまちづくりの実証や先端研究でも世界の先頭を走っておられます。ソフトの位置付けの変化と車の役割の変化という2つの変化に対応し、モビリティカンパニーへとフルモデルチェンジしていくためにNTTとの提携は必要不可欠であり、ある種必然であったとすら思っております。

交通、通信の世帯支出が増加

 そして私たちはさらなる仲間を求めていくことになると思います。この提携のベースにあるのはオープンマインドです。多くの仲間と共に未来をもっと良くしたい、それは両社共通の思いです。最後に、今回の提携の根底にある私の思いをお話ししたいと思います。このグラフをご覧ください。平成の30年間の1世帯当たりの支出を見ますと、支出総額は増えてないものの、交通、通信の項目が約30年前の10%から15%に増えております。いみじくも家計調査では両者が同じ分類になっておりますが、この間キープを向かえた日本の自動車市場に対しまして大幅に増えておりますのが通信です。

 これは人々が車以上に通信を必要不可欠なものだと考えていること、もっと言うと通信が人々の幸せにつながっているということだと思います。かつては車がその役割を担っていたと思います。このグラフを見て、もう一度車が頑張らないといけない。日本の基幹産業であり、成長産業だというならば、もっと人々に幸せを与える存在にならなければならないということを痛感いたしました。

 こちらの円錐形をご覧ください。これは1955年にトヨタ自動車工業が発行した【「トヨタ」 00:23:42】と題した冊子にあったものでございます。「トヨタとは?」というタイトルとともに、この円錐形が記載されておりました。一番上には佐吉翁の遺志とあります。これは豊田綱領のことであり、その中には産業報国の精神があります。織機から自動車にフルモデルチェンジを果たし現在に至るまで、トヨタの根底にあるのは社会や国を豊かにすることに貢献したいという強い思いです。未来の社会づくりには大きなエネルギーが必要となります。先を見通すことが難しい大変革の時代、解答のない時代だからこそ、お国のためにという意思を持ち、未来を創造する技術力と人間力を持った民間企業が決起することが大切だと考えております。

【書き起こし】トヨタとNTTが会見 スマートシティー構想で提携 全文2に続く