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Peugot e-208 オンラインカンファレンスで判るプジョージャパンの今後
プジョー新型208には、EVが用意されます。実用的な走行性能で現れるプジョー e-208 のオンラインカンファレンスを見ると、プジョージャパンの本気が見えてきます。
今回は目玉であるEV仕様208ではなく、プジョーのメッセージをじっくり見ていきたいと思います。
たぶん、こういう記事こそ”まこまち”の真骨頂(笑)楽しんで頂けると幸いです。
グループPSA。プジョーとシトロエンというフランスタッグが、とうとう日本を席巻する。しっかり走るEVを、日産やテスラに次いで発表したからだ。
オンラインカンファレンスの冒頭、PSAジャパン代表のANGLEO SIMONEは英語を使って前座を務めた。流暢とは言えない英語を聴くと、彼なりの苦労を感じ取れる。
トピックはやはりオンライン。新しい試みと言うけれど、すでに定番になったと捉えても良いだろう。コロナに負けず、経済をしっかりまわす。使える技術はなんでも使おう。
そもそも、晩ご飯を食べながらカンファレンスを聞けるんだ。時代は変わったという他ないよね。
しかし、白い背景に白い字幕。プジョーもセンスないよねって家内と笑って話していたら。
次に現れたフランス人は違っていた。
「ニホンノミナサン、コンニチワ。」
やれやれ、よくある挨拶だと軽い気持ちで見ていたら。
「プジョというブランドは、ナガいレキシがあります。コトシでヒャクジュシュウネンをむかえました。」
な、なにいー!!
TOHMAS VLICOT (トマ・ビルコ)マーケティングディレクター。彼は、一部始終を日本語で話していた。日本人の用意したカンペっぽさはあるけれど、しっかり聞き取れるしっかりした日本語だ。
プジョー はデザインとテクノロジーを大切にして車を開発しています。本日発表する新型208は、欧州カーオブザイヤーを受賞しました。新しいコンセプトは「パワーチョイス」。同じデザインで、同じクラス以上の乗り心地で、EVを選ぶ事ができます。
退屈な未来はいらない。プジョーは次のステップへ、環境を守りながら、エキサイティングなプロダクトを作ります。一緒に退屈のない未来に行きましょう。
正直、驚く。だいたい、海外から来た経営者はグローバル志向者だ。英語を話すのは理解できる。無理なら母国語を入れてもいい。そもそもフランス語は、国連での統一言語なのだから。
ところが、年間1万台程度のこの国で、彼は英語ではなく日本語を選んだのだ。
情熱を感じさせる手法?
日本人を釣り上げるイメージ戦略?
どれだってよい。プジョーはあきらかに、日本という市場に歩み寄った。最善の手法をひとつ、披露したんだ。
パワーチョイスは全力でお客様に尽くす証
続いて、車の解説が始まる。性能云々は、私はとりあえず記事にしない。他に纏まっているブログは沢山あるしね。
注目したいのは、やはり「パワーチョイス」。ガソリンとEVが同じボディで現れた事。
EVで集客し、安いガソリンを買ってもらう。この企みはあるはずだ。航続距離、軽快さ、パワフルさ。新型208とe-208は明らかに違う味付けになるだろう。
だが、プジョー乗りとして、消費者として言わせてもらうと、ポイントはそこではない。彼らは208とe-208を同時に発表する事で、「ある印象」を拭っている。
それは、人を焦らさない事だ。
e-208 が欲しい人に、とりあえず208にしませんか?という提案はしない。いつ出るか分からないから、違うクルマを買ってしまうという悲しいミスを起こさせない。
EVへの過渡期において、しばらくはガソリンやディーゼル、ハイブリッド、PHV、そしてEVが並行して販売される。エネルギーの観点から見て消費者として不安なのは、これから購入する車に、別のパワーソースが搭載されないかという不安だろう。
クルマは一生のうちに何度も買えるものではなく、ましてや1年で手放すことは、輸入車に乗るのなら値落ち40%は覚悟しなくてはならないことだ。
例えば、ガソリンモデルが登場し、EVモデルが発売未定だったとする。デザインが好きだから、このメーカーのこのサイズが好きだからと、EVが欲しいにも関わらずガソリンモデルを購入する。EVモデルが一年後に登場したら、悲劇である。
また、EVが欲しいと待ち続けた挙句、3年経ってやっと出た。これも悲劇である。
パワーチョイスは、この心配が不要になる。
ガソリンモデルの販売促進の為に、あえてEVモデルを遅らせるとか、数年後のトピックスにするだとか、法人側のコントロールで輸入車に縛りを入れるのはナンセンス。
プジョーは「パワーチョイス」というコンセプトとともに、この問題を払拭した。私はこの点を大いに評価したい。
ディーラーの利益を優先するでなく、顧客の利益を優先する。そうすれば、必ずディーラーに帰ってくる。
そして、PSA本体に利益が入る。したたかであり、計画された事なのは承知だが、こちらを見てくれていることがとても嬉しく感じるじゃないか。
出る出る詐欺はもういらない。10月にガソリンモデル、12月にEVモデルを販売開始するという、プジョーの「パワーチョイス」戦略を、私は指示したいと思います。
最後に、商品解説。ここでは日本人が担当する。いつもは人前で話すことなどないぞ、というような「おっちゃん」が現れて拍子抜け。しかし、クルマの理解を日本人技術者がしてくれているのは、やはりホッとするものだ。
実は、この商品解説に動画全体の3分の2を使っている。視聴者の興味をよく理解しているよね。やはりパワーチョイスの話になっていくのだが、電気で走るというところ以外を巧みに印象つけてくる。
ノイズが0、匂いが0、ギアチェンジが0、振動が0。排気ガス以外のさまざまなメリットを説明したり、スポートモードのセレクトボタン、シフトの形状が従来車と同じであったり。コストカットと言えなくはないけれど、ガソリンモデル購入者とEV購入者を差別化しない手法は素晴らしい。
デザインは、リアからの眺めがやはり良い。家内も気に入った様子で、ちょっと欲しそう(と、勝手に想像してみるw)。シャイニングブラックホイールアーチがお気に入りのようで、付いていないグレードは嫌だという(笑)
いくらなら買うか? いくらなら安いか? 300 万円 なら安いよね、少なくとも 400 万円 するんじゃない? などと話をしていたら、絶妙な価格が発信された。
補助金と維持費を踏まえれば、ガソリン車との価格差がなくなるような設定だという。なかなか嬉しい、208の発表だった。
これがプジョーの強さなのか
商売とは、人と人との繋がりだ。
売る側は良い商品を用意して、良いサービスを提供して、対価を得る。買う側は、対価を支払う。この関係性はフィフティー・フィフティーだと私は常に考えている。
売る側がお客様にお礼を言うのは、「私達の商品を選んでくれてありがとう。」という意味でのお礼であり、商品と対価とは物々交換の関係性。クルマを買い、維持をするのは、自動車メーカーとユーザーとの二人三脚と捉えるのが私の主張だ。
だから、売ることができるものを敢えて売らないだとか、その説明を怠るだとかは許すことのできない事であって、だからこそ私はボルボから離れることになったんだ。
プジョーでは、ディーラーの人は一所懸命に業務をこなし、要求に応えようと必死であった。しかしそれはフランチャイズ・ディーラーだからこその良さなのかなと感じていたが。
どうやら、プジョーは違うらしい。
選択権を売りてに委ねる「パワー・チョイス」コンセプト。経営トップの真剣味。グループ全体での「おもてなし」は、優秀な経営者の独りよがりでは成り立たない。
人と人とがつながれば、新たな物語が生まれるものだ。動画を見てくれた人への思いやりは、日本語で挨拶する経営層と、たくさんの商品解説で見て取れる。
強いリーダーシップではなく、強いチームで進めるプロダクト。商品の魅力を引き出すための、最善の方法を模索する。だからこそ、最近のプジョーの躍進があるのだろう。
プジョーのメッセージ。それは、商品の良さだけでなく、商売の基本を抑え、誠実さを大事にするよという意識を大切にしたい。そう言っているように聞こえるのだが、皆さんはどのように捉えただろうか。
ここまで来てようやく、私はプジョーを選んでよかったと思うことができた。今後のプジョーや、e-208の試乗が愉しみだ。