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アウディQ8が登場。SUVにおけるフラッグシップの役割を担う
アウディジャパンはSUVのフラッグシップとなるQ8を発表。発売は9月3により開始される。その発表会場に選ばれたのは東京都現代美術館。そこには本国からエクステリアチーフデザイナーも来日し、Q8の成り立ちやデザインについてプレゼンテーションが行われた。つまり、かなりデザインに力を入れたSUVというわけだ。価格は992万円から1102万円。
Audi AGエクステリアデザインチームリーダーのフランク・ランバーティ氏は、この“8”という数字から説明を始める。「これはマジックナンバー。アウディにとって8はフラッグシップという意味なのです。例えばサルーン系ではA8、スポーツモデルのフラッグシップはR8。そして最後に今まで空いていたQモデルの8を今回埋めることができました」と述べる。
このQ8の開発の背景については、「プロジェクトが始まったのは6年前。SUVのQ7は既に存在し、これは本当に素晴らしいクルマです。そこでこのルーフラインをクーペライクにしてはどうかがスタートでした」と振り返る。つまり、A7やA5のスポーツバックのように流れるようなルーフラインを持たせようというのだ。ランバーティ氏は「これ自体はそれほど悪くなかったと思うのですが、BMWにはX6があり、メルセデスにはGLEがあります。つまりこれらのクローンのようなイメージになったのです」という。
そこで、「なぜアウディがこれらと同じようなクルマを作らなければいけないのか。我々はアウディなのですから、アウディのアイデンティティを注ぎ込まなければならないと考えながらも、ルーフの形をいろいろ模索していました。その結果、特にCピラーの部分は何かイメージとは違う、プロポーション自体があまり良くない、フィットしないという結果となり、全く新しいクルマを作ることになりました。これは、非常に重要なことで、この結論に至ったからこそ、Q8をこのレベルにまで仕上げることができたのです」とそのデザインに自信を見せる。
具体的にはホイールとホイールハウスをより大きくし、ルーフを30mm下げた。これらはデザイナーにとってクルマを格好良く見せるのに都合のよい手法だ。また、リアエンドを少し短くしてプロポーションを整えていった。
そのうえで、どういうデザインテーマをこのクルマに当てはめるかが次の課題だった。ランバーティ氏によると、「全く新しいクルマをデザインする時は必ずアウディの歴史を振り返ります」という。そこで見つけたのがスポーツクワトロだった。「確かに一番かっこいいクルマとはいえないかもしれませんが、最もエキサイティングなクルマであることは間違いないでしょう。そこでこのクルマを参考にすることにしたのです」とコメント。
スポーツクワトロは非常にユニークなデザインをまとっているが、ここからどのデザインモチーフをQ8に取り入れたのか。デザイントップのマーク・リヒテは“アウディは必ずクワトロを示さなければいけない”という信条を持っている。そこで、クワトロブリスターをQ8にも取り入れた。次にスポーツクワトロの前に押し出すような印象を持つブラックマスクだ。そしてクーペだが流れるような印象ではなく、ルーフからリアスポイラーまでつながるスポーツ性の高いCピラー。最後はリアの黒いライトバンドという大きく4つの要素を採用したのだ。
ランバーティ氏は、「クアトロブリスターがメインテーマ。特に上から見てもらうとよくわかります。次にフロントマスクはS-Lineではチタングレー、標準車はボディカラーをまとい、力強いエレメントになっています。つい先日発表したSQ8アルミを採用しています」と説明。
そしてルーフラインの解釈だが、「スポーツクワトロのデザインをモチーフに、A7で採用した流れるようなルーフラインではなく、後端に行くにしたがって緩やかに下がるルーフラインと非常に力強いCピラーを採用。そしてリアのライトバンドは遠くから見てもQ8が来たという力強いステートメントになっています」とスポーツクワトロのデザインモチーフをQ8にどのように採用したかを語る。
ここで気に留めておかなければいけないのはフロント周りだ。「Q8はただ単にSUVラインナップに加わっただけではなく、この後出てくるアウディのSUVの母的な存在になるのです」とランバーティ氏。つまり、このフロント周りの特徴はこの後出てくるQモデルに採用されるデザインなのである。「特に八角形のシングルフレームグリルは、非常にスポーティに仕上げました。ワイドで高さが低くスリムになっているでしょう。次期Q7ではもう少し高さがあるものになります」とし、この八角形のシングルフレームグリルを軸にそれぞれのクルマの性格に合わせてデザインを変えていく意向のようだ。
また、サイドウインドウがフレームレスなのも特徴的だ。ランボルギーニウルスにも採用されているが、「それ以外のSUVクーペはないのでは」とランバーティ氏。この結果、「ルーフを下げることができたのです」と話す。同時に後部座席はルーフラインの影響をほとんど受けておらず、「乗降性が高くヘッドクリアランスやレッグスペースも十分に確保されています」とデザインによる犠牲も大きくなく機能性が高いことを強調した。
Q8に搭載されるパワートレインはV型6気筒3リッターターボTFSIエンジンに、8速オートマチックとフルタイム4WDのクワトロが組み合わされる。エンジンの出力は340ps/500Nmを発揮する。
Q8に搭載されるパワートレインはV型6気筒3リッターターボTFSIエンジンに、8速オートマチックとフルタイム4WDのクワトロが組み合わせ
このエンジンに組み合わされる48Vのマイルドハイブリッド技術はV6エンジンを搭載した新世代の全てのアウディモデルに標準装備されるものだ。48Vの高い電圧とリチウムイオンバッテリー(10Ah)、ベルト駆動式オルタネータースターターを用いたこのマイルドハイブリッドシステムにより、高性能と高効率を高次元で両立。さらに22km/h以下でのエンジンのストップ&スタートと最大12kWという高いエネルギー回生能力を実現。また高速道路では最大40秒間エンジンを休止させることで、燃料を節約することもできる。なお来年にはディーゼルモデルも追加される予定だ。
サスペンションでは最大5度後輪を操舵するAWS、四輪操舵システムを採用。全長4,995mm、全幅1,995mm、全高1,705mmのボディにも関わらず、狭い道でも容易に取り回しが可能となっている。
Q8のリヤデザイン。ブラックのリヤガーニッシュに浮かぶテールランプが特徴的
アウディジャパン代表取締役社長のフィリップ・ノアック氏はSUV市場について、「2006年、Q7のデビュー以降Qモデルの人気はQ5、Q3によってさらに高まりました。最近ではコンパクトなQ2モデルが2017年に発売され、アウディジャパンのベストセラーモデルのひとつです。現在アウディを購入するお客様の3人に1人がSUVを選択しています」と現状を語る。
そして、Q7が存在する市場にもう一台追加する理由について、「SUV市場が成長を続けているからです。2019年第1四半期のアウディの世界販売に占めるSUVのシェアは38%。そしてその数値は2025年までに50%になると予想しています。したがって2025年には2台に1台がSUVになる計算なのです」と今後もSUV市場が拡大し、それに伴いアウディもこの市場により力を入れていくことを示唆する。
また、日本市場においては「全高が低くワイドなスタンスを持つ、クーペのようなシルエットを備えたSUVモデルの販売が好調です。これらのモデルはとてもスポーティであると同時にスタイリッシュでもあります。こうしたクーペSUVはファッション、デザイン、最新のトレンドに非常に敏感な富裕層を魅了。こうしたお客様は自分のクルマでライフスタイルや個性を表現したいと考えています。つまりいわゆるクーペSUVと呼ばれる市場が生まれているのです」と述べ、Q8は「スポーティでスタイリッシュなSUVを求めるこの新しい市場に対するアウディの答えなのです」と結んだ。
アウディジャパン代表取締役社長のフィリップ・ノアック氏(左)と俳優の井浦新氏(右)
今回の発表会には俳優の井浦新氏も登壇。アウディとは初めて開催した箱根彫刻の森美術館で開催した写真展でバックアップしてもらうなど、深い関係があるという。
写真をはじめ登山やキャンプなどをよくする井浦氏から見たQ8の印象を問われると、「自分もモノを作る仕事をしていますが、そのモノづくりをする上で大事にしていることは温故知新。古きをしっかり学んで新しい時代に新しい感覚でモノを作っていくということです。Q8を最初に見た時の印象は、洗練された新しさというものと、どこか無骨で逞しいさ、タフさを感じる懐かしさ。この2つが同居しているデザインで、理想的なプロポーションだと感じました」と好印象な様子だ。そして残念ながら助手席からのインプレッションだが、「これだけタフなビジュアルを持っていながらとても静かで中が広いですね。左右上下の広がりがあるのでラグジュアリーなリビングにいるような気持ちにさせられました」とコメント。
そして、「趣味がたくさんあり、自分の好きな道具が近くにあると幸せで、生活を豊かにしてくれます。クルマの中にも倉庫のように自分の好きな道具を詰め込む習慣があり、Q8はトランクも広いのでここにたくさんの趣味の道具を詰め込みたい。それさえ積んでいれば大自然の中へでもいつでも行けますし、室内の安心・安全でラグジュアリーな空間がとても良かったので、そういった優雅な気分で都会を走りながら、自分の趣味の活動をするということは間違いなく豊かなライフスタイルが送れると思いました」とのこと。
最後に井浦氏は、「アウディは海外の映画でたくさん見ることができますので、ぜひ日本映画でもアウディが沢山登場して、そのクルマと共演をしてみたいですね」と語った。