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アウディ、「e-tron Sportback」を導入したフィリップ社長「2020年は200台、2021年は500~600台の販売を目指す」
アウディ ジャパンは9月17日、EV(電気自動車)の「e-tron Sportback」の日本初導入について、オンライン発表会を行なった。登壇したのは、アウディ ジャパン代表取締役社長のフィリップ・ノアック氏。
フィリップ氏は、今回のEVの日本導入についての背景から語り始めた。
世界は変化を始めていて、アウディもすでに電動化に舵を切り、2025年までに全世界で20種以上のEVモデルの投入を予告。これは全世界の販売台数の40%が電動モデルになる計算だという。
電動化へと舵を切る理由は地球温暖化はもちろん、人々の行動様式や価値観が多様化し、CO2排出を減らし世界の環境保全に貢献するにはどうするべきか問われる時代。電動化は最終的な解答ではないが、アウディとしてはそれは正しい一歩だと確信していて、EVはその有力な選択肢のひとつだと考えているという。
アルミ資材のクローズループ
それを裏付けるように2020年前半だけで1万7700台のe-tronが売れ、特にノルウェーでは乗用車カテゴリーでトップを記録。また、アメリカでは2019年比で50%の販売増を記録している。
そして人の意識が変わるのと同時に企業も変わる必要が求められている。国連の定めるSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)のことを常に考えていて、車両自体がCO2を排出しないだけではなく、工場の製造過程、廃棄物の量にも注目する必要がある。アウディのブリュッセル工場は、カーボンニュートラル認証を取得。これは自動車メーカーの量産工場としては初の快挙であったと説明した。
フィリップ氏が感銘した日本語「もったいない」
またドイツのプレス工場ではスクラップを再利用する循環機能を完成していて、プレス工場で出たアルミの廃材はサプライヤーに戻して再利用される流れを作っているという。これにより新たにアルミを作るより95%のエネルギーを節約できると語った。
続けてフィリップ氏は日本に赴任してきて「もったいない」という言葉に出会い、これはアウディの工場で行なっている改善と通じ合うと感じた。人々の思いやりの積み重ねが、最終的には環境を守ることにつながると考えているという。アウディ ジャパンでは100%自然エネルギー由来の電気を提供している自然電力とパートナーシップを結び、ここでも環境への配慮を行なっていることを紹介。
フィリップ氏は2020年が「クワトロ」誕生40周年であることにも言及。クワトロは4WDの可能性を広めた1台であるとともに、今回開発チームが新たに電動クワトロ「e-quattro」を生み出し、それがe-tron Sportbackに搭載されていることを解説した。
質問に回答するフィリップ社長
質疑応答では、現在はCHAdeMO(チャデモ)の50kWの急速充電を利用する形だが、将来的に150kWでの急速充電の道も模索していることや、目標の販売台数については2020年は残り3か月なので200台。2021年は500~600台を狙う。しかし、台数よりもまずは多くの人に技術を見てほしいと語った。
続いて登場したマーケティング本部の村田氏は、e-tron Sportbackのテクニカル部分を解説。最初に説明したのがバッテリーとモーター。車両の前後に誘導モーターを備えるクワトロドライブで、バッテリーを床下に敷き詰めることで前後50:50の理想的な重量配分に加え、エアサスペンションにより爽快なハンドリング性能を実現したという。
システムの総合出力は265kWだが、ブーストモード時には最高出力300kWと電気自動車ならではの最大トルク664Nmを発するという。基本的にはリア駆動とすることで、消費電力をおさえながら航続距離をキープ。悪路などでは4WD走行となる。
ドイツ本社の技術者であるOswin Roder氏は「各ホイールごとに独立してトルクコントロールできるため、あらゆる状況で、最適なドライビングを実現する。トルクはわずか0.03秒でタイヤに伝わります」とe-quattroの高性能さを解説してくれた。
また田村氏は、EVのコアとなる95kWのバッテリーユニットは、WLTCモードで405㎞の航続距離を誇るのと同時に、4つの回路を使った水冷システムが最適な熱交換を行なうことで、常に理想的な温度に保つことで、素早い急速充電も可能にしていると付け加えた。
さらに強力な回生システムについて、ひとつの山を登って下った場合を例にして解説。e-tron Sportbackは登りで消費したエネルギーの7割を回収できると、その能力の高さをアピール。ミリ波レーダー、カメラセンサー、超音波センサーなど計22個のセンサーを搭載し、安全・安心の運転支援機能を搭載していること締めくくった。
安全運転支援システムも充実
デザインについてはドイツ本社のエクステリアデザイナーであるフィリップ レーマーズ氏が語ってくれた。基本となるアイデアは、e-tronの上にA7 Sportbackの形を乗せることだったとのことで、美しい弓なりのルーフライン、スポーツバックらしいウインドウグラフィック、低位置のリアスポイラーを備え、魅力的なエレクトリックSUVクーペが誕生できたと語ってくれた。空力的にも優れていて、Cd値(空気抵抗値)は0.26を誇り、これはe-tron SUVよりも0.2低減できているという。当然Cd値はEVの航続距離に大きく影響するため、美しさと同時に高効率であることも説明した。
またフロントには新しいシングルフレームグリルを採用。冷却エアを必要としないため、部分的に閉じた構造とし、100m先からでもアウディであることが分かるように工夫を凝らしたという。リアビューは個人的にもっとも美しいと感じているという。
最後に女優、アーティスト、そして自身で2016年に立ち上げたレトロワグラースの代表としても活躍しつつ、e-tronサポーターも務める柴咲コウさんが登場。柴咲さんはかねてより人と自然が調和する持続可能なライフスタイルを見据え、森・里・川・海と人とのつながり、自然との共生を念頭に活動していて、サスティナビリティに特化しているアウディの活動は親和性を高く感じているという。
サスティナビリティは言葉でいうとひと言だけど、コツコツと積み上げていくことが大切で、生産背景も考慮する、端切れを再利用するなどリサイクルも重要だという。
実際に運転が好きだという柴咲さんは、e-tron Sportbackを運転してみたところ「中も外もカッコいいし、何よりもの凄く加速がいいです。その後もとても静かで驚いた」とコメント。また、スペシャルムービーの撮影が深夜から早朝に及んだなど、撮影秘話などを明かしてくれた。楽曲については「人間の本能を呼び覚ますような音楽を目指した」と語っていた。