プレゼンテーション「ワイモバイル「かんたんスマホ」発表会」

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ワイモバイル「かんたんスマホ」発表会

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LINEモバイルとの“すみ分け”は? ソフトバンク「併売」の効果は?――「Y!mobile発表会」一問一答

ソフトバンクは8月1日、都内で「“ワイモバイル”の新商品に関する記者説明会」を開催。同社のY!mobile事業の責任者である寺尾洋幸乗務執行役員が登壇し、スマホプランのデータ通信容量倍増、パケットマイレージの拡充と、Y!mobileブランド初となるシニア向けスマートフォンの新製品について説明を行った。

→Y!mobileの「スマホプラン」「スマホベーシックプラン」のデータ容量が倍増 9月1日から
→Y!mobileが「かんたんスマホ」を8月9日発売 60歳以上には「通話無料」特典も
 この記事では、寺尾氏と報道関係者との質疑応答と、会終了後の囲み取材における主なやりとりをまとめる。

質疑応答
―― かんたんスマホの専用ホームアプリを、Y!mobileの「Android One」端末に展開する予定はあるか。
寺尾氏 予定はない。
―― 60歳以上のユーザーがかんたんスマホを購入した場合、国内通話定額(スーパーだれとでも定額)を無料で使える。この契約のSIMカードを他の端末に挿して使った場合も、同様に無料で使えるか。
寺尾氏 できる。(購入時に)使用者確認を行うので、お客さまを信頼してやらせていただく(穴はふさがない)。
―― 今回シニアに特化したスマホを投入したが、あえて若者に振り切った(≒スマホに不慣れなシニアを取り込まない)方がサポートコストを削減できるという考え方もできたはず。なぜここでシニア向けスマホに取り組もうと考えたのか。
寺尾氏 シニア向けスマホを出すに当たって、そのこと(サポートとコストの兼ね合い)についていろいろと考えた結果、「問い合わせの起きない(少なくなる)端末を作ればいい」という発想から開発したのが、今回発表したかんたんスマホということになる。
 シニアの方からの問い合わせは「ベーシックな質問」が非常に多い。そこをフォローできれば、問い合わせは当然少なくなる。ハードウェアキーを搭載したり、「押すだけサポート」を用意したりしたのはそのためだ。
 Y!mobileを立ち上げる際、最初に「インターネットの一番の受益者はだれであるべきか」という議論をした。
 ここにいる皆さん(発表会を取材する記者)がEコマース(で買い物を)できるのは当たり前だと思うが、私や皆さんの両親、あるいは祖父母といった人たちはそうでもない。今「買い物難民」という言葉があるが、こういった人たちがインターネットで買い物できるようになれば、重たい荷物を持って距離を移動する必要がなくなる。

 そういう意味で、(インターネットやスマートフォンは)一番届くべき人に届いていない。どうやって解決しようか試行錯誤してきた。その中で生まれたのが、この商品ということになる。

―― Y!mobileにおいて全ユーザーに占める60歳以上の比率はどのくらいか。
寺尾氏 だいたい2割くらいとなっている。
 (Y!mobileブランドの前身である)ウィルコムやイー・モバイルの頃は30~40代がユーザーの中心だったが、Y!mobileになってから(ヤフーとの協業を始めてから)、そのご両親に当たる年代の方が増えた。

―― シニア層は使うデータ量が少なく、今回の(スマホパックにおける)通信容量アップはあまりメリットがないように思える。これでシニア層の需要を喚起できるのか。
寺尾氏 一番安い「スマホプランS」を契約した場合、(月間の)データ量は3GBとなる。(新規契約や機種変更から)1年目の料金は家族割引対象なら1480円、そうでなくても1980円で3GB(の通信容量)を使えるので、価格感としてはフィーチャーフォンの月額料金とほぼ同じになる。
 これをシニアに特化した商品(かんたんスマホ)と組み合わせることで、シニア層の需要をもっと引き出せると思う。

「4年縛り」は難しい問題
―― KDDIが「4年縛り」(アップグレードプログラムEX)の見直しを行うという報道がある(参考記事)。
寺尾氏 皆さん、(4年縛りの是非について)どう思いますか。難しい問題だと思う。
 売り方の面で「次はブロックする」(≒残債免除の条件として買い換えプログラムの継続を要求する)というのは(ユーザーの)流動性に問題が生じうる。ただ、お客さまの(購入する際の)端末価格は高くなってきている中で、「2年」「4年」という買い方(分割払い)が出てきたが、これも同じである(捉え方次第では問題になり得る)と思う。
 お客さまが動きにくい(乗り換えづらい)状況を作ることは競争上良くないが、そのこと(を解決すること)が全ての問題を解決するとも思わない。変にルールで縛ると、かえってお客さまの流動性が低くなるのではないかという懸念もある。
 (ユーザーを)取る立場からすると「どんどん自由になれよ」とは思うが、お客さまから見て買いやすい売り方・買い方は提案していく必要もある。
 ルールが決められればそれに従うが、我々としてはお客さまがより買いやすくて選びやすい環境を作ることが大事だと考えている。

iPhoneを含む端末ラインアップについて
―― 公正取引委員会がAppleの「iPhone Agreement」について言及する発表を行った。この中でiPhone Agreementを改訂したという旨の話も出てきているが、Y!mobileとして何らかの影響はあったか。
寺尾氏 分からない。Agreementの中身については関知していない。

―― 取り扱うiPhoneの種類が増えるということはないのか。
寺尾氏 (取り扱い機種は)Agreementに縛られているのではなく、戦略の中で決めている。Agreementの話とは切り離して考えてもらっても良いと思う。

―― 今回の新製品はシニア向けだが、他の大手キャリアではジュニア向け機種もある。今後、ターゲットを絞った端末を継続的に投入していくのか。
寺尾氏 ジュニア向け端末は少し悩みどころ。「ジュニア市場のスマホ」とはどんなものだろうと。
 もう少し年齢層の低いキッズ(小学校低学年)向けであれば一定の需要があることは認識しているが、その間(小学校高学年から中学生まで)という所だと(需要的に)すごく狭いので……。
 ただ、いつも言っていることではあるが、今日話していることは明日の決定事項ではない。世の中は常に変わっていくし、進化しないことは(市場の中で)死んでいくことにつながるので、今後は分からない。
 今の所は「あんしんフィルター」を既存機種に入れて対応したい。親子の約束も大事だと思う。

―― 今回の新端末でサポートコストを減らす観点で「押すだけサポート」を取り入れたが、シニア層は真っ先に(サポートに)電話をかけてしまうというイメージがある。
 専用のコールセンターを設けるという話もあるが、コスト増は見込んでいるのか。
寺尾氏 もちろんある程度のコスト増は見込んでいるが、そこまで大きくはならないと思う。
 お客さまが増えれば問い合わせが増えるのも当然なので、全体のコストの中でやりくりしていくことになる。

―― (シニア向け端末を)Android Oneで作ることはできなかったのか。
寺尾氏 (Android Oneに準拠する場合)ハードウェアボタンの搭載など、難しい面が出てくる。
 セキュリティ更新はやっていくにしても、OSバージョンアップも原則として自動で行うとなると、それがシニア層にとって(使い勝手の面で)「プラス」になるかというと難しい。例えばこれ(四角いアイコン)が突然丸くなったら、パニックに陥ると思う。
 シニア層はこれ(かんたんスマホ)だけ買いなさい、というわけではなく(リテラシー次第で)iPhoneやAndroid Oneも用意している。この機種は「メールがしたい」「LINEがしたい」といったベーシックな機能を前に(ホーム画面のトップに)持ってきているので、サポートコストも下げられるのではないかと考えている。
 やってみて反省して、改善していきたいと思っている。

―― かんたんスマホのホームアプリみたいなものをAndroid Oneスマホに入れて売る、というアプローチは考えなかったのか。
寺尾氏 「初心者向けのホームアプリをAndroid Oneにインストールして売る」という取り組みを一部の店舗ではしているとは聞いている。ただ、1~2枚設定をめくると、(画面のカスタマイズがなされていないため)リテラシーを要求するというか、少し小難しくなってしまう。
 そんなスマホを自分の80~90代の両親にそのまま渡せるかというと、それはしんどい。親不孝な息子は、一番な簡単なモノを渡したいという発想でいる。
 実際の購入シーンでは、シニアの方はお孫さん、あるいは息子・娘と一緒の機種を買う傾向にある。(家族の)サポートを受けられるなら「こうするのよ」「ああするのよ」と教えつつ使えば良いが、そうでないなら「困ったら真ん中のボタン(押すだけサポート)を押せ」とできるこの端末が良いと思う。

MVNOとの競争
―― 9月からの容量増で、MVNOに対する価格競争力が増したと思う。そうなるとMVNOから「(ソフトバンク回線を)もっと安く貸してほしい」という話も出てくると思う
寺尾氏 (MVNOも含めて)全体的に月間データ容量の増加は進んでいる。この料金体系であれば、MVNOさんの現状の取り引きレート(帯域料金)でも十分カバーできる(同じような料金体系にできる)と思う。

―― 容量が倍増することで「1つ下のプランでいいかな」と考える人もいると思う。収益への影響はどのくらいを見込んでいるか。
寺尾氏 具体的な金額については申し上げにくいが、それほど大きな影響はないと思っている。
 お客さまは、データ容量の上限に当たることでストレスを抱えている。上位のプランほど増える容量も大きくなるので、(データをより多く使う人が)プランを変えるというケースも出てくると思う。
 よく「既存のユーザーへの還元が少ない」という指摘を受けることもあるが、今回の容量アップである程度還元できると考えている。Lプランなら、後から容量を購入する場合と比較して(月額)7000円分の還元ができる。
 少しずつでも既存のお客さまに還元ができればと思っている。

―― 現状の「1年目が一番安くて、2年目は少し高くなる」という料金はどうにかならないのか。
寺尾氏 誰がしかけたものか分からないが、競争がある。
 「1年目が安い」というのはデファクトスタンダード(事実上の標準)になってしまった感もある。

―― 「2年間安い」と言いながら、3年契約となっているケースも見受けられる。
(筆者注:楽天モバイルの「スーパーホーダイ」の3年プランは、月額料金の割引期間が2年間となっている)
寺尾氏 他社のことについてはコメントを控えるが、あまり複雑なこと(割引)はしたくないと思っている。
 お客さまが乗り換える際には、解約金を始めとして大きな負担がかかることもある。なので「(負担感を軽減するために)1年目だけ料金を下げる」という形態を取っている。
 できるだけ(そういったことは)なくしたいとは思っているが、競争もあるので踏み切れない面もある。

ソフトバンクブランドとLINEモバイルとのすみ分け
―― 親会社(ソフトバンクグループ)の決算資料を見ると、ソフトバンク(SoftBank)ブランドが良く伸びていて、Y!mobileブランドの伸びが鈍いように思える(参考記事)。より大容量のプランが求められているということなのか。
寺尾氏 私たちのストック(契約者数)が増えてくると、解約者数も増える。そういう意味で獲得(新規契約者数)そのものが落ち込んでいるわけではない。

―― ソフトバンクのネットワークを使うMVNOサービスが増えてきた。“競合”としてみなすのか。
寺尾氏 競合かといえば競合になるとは思うが、それは「LINEモバイル」を指しているのか。
(筆者注:LINEモバイルは3月31日付でソフトバンクの子会社となった)

―― それはもちろんだが、ケイ・オプティコムの「mineo」などもある。
寺尾氏 mineoは明らかに競合。一方で、LINEモバイルは同じグループ内にいるので難しい所だが、お互い切磋琢磨(せっさたくま)していければ良いと思っている。
 以前もお話ししたが、お客さまにとって良いことをやっていって、誰が支持されるかということだと思う。ルールの中で、お客さまに(サービスを)提供していって、それで支持されれば私たちが成長できるだろうし、他のキャリアやMVNOが支持されて成長することもありうる。
 負けないように頑張っていくが、最後はやはりお客さまにちゃんと使ってもらって、インターネットの便利さや楽しさを体感してもらうことに尽きると思う。

―― LINEモバイルとはどのようにすみ分けを図っていくのか。
寺尾氏 2~3年前、「ソフトバンクとY!mobileはどうすみ分けるのか」という質問をいただいた。それと同様に、何とかやっていくんだとは思う。

―― 今回の容量アップで、価格(プラン)面でもLINEモバイルに近づいてしまっている。LINEモバイル側を値下げするといった策は考えているのか。
寺尾氏 現時点で決まっていることはない。
 私たちもLINEモバイルも、より使いやすくしていって競争が“激化”すれば皆さんの期待に応えられると思う。

―― 沖縄県以外でY!mobileを取り扱うソフトバンクショップが増えている。販売面で効果はあったか。
寺尾氏 プラスが出ないのならやらないです(笑)。
 現在、約1300のソフトバンクショップでY!mobile商品を取り扱いいただいている。Y!mobileショップは1000店舗ほどあるが、その商圏外における販売やサポートの拠点という位置付けだ。

―― Y!mobile目当てにソフトバンクショップに来たユーザーがソフトバンク(ブランド)を契約する、ということもあるのか。
寺尾氏 店頭ではさまざまな商品を提案するので(そのようなこともあると思う)。
 お客さまが大容量、あるいは最新のiPhoneを求めるならソフトバンク、低容量で安くというのであればY!mobileというすみ分けをしていると聞いている。
 Y!mobileの契約者は「Mプラン」が中心。(新規契約・機種変更から1年目は)月額2980円、家族割引適用で2480円、「SoftBank光」の割引適用で2280円といった価格感となっている。「松竹梅」でいえば「竹」が一番選ばれている感じだ。

―― そうなると、Y!mobileブランドのARPU(1回線当たりの平均収入)は2980円ぐらいになるのか。
寺尾氏 いろいろな調査で見ると分かると思うが、額としてはもう少し大きい。