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“飲み物を横に置ける”コンパクトサイズで働き方改革を支援――「Let’s note QV8」の秘密に迫る
既報の通り、パナソニックは10月18日、新しい2in1モバイルノートPC「Lets’s note(レッツノート) QV8」(CF-QV8シリーズ)を発売する。個人向けの量販店モデルの想定販売価格は27万円から、「Panasonic Store」(Web直販)限定のカスタマイズモデルの販売価格は28万3580円(プレミアムエディションは33万1800円)からとなっている。
9月24日、同社はこの新製品を披露する「パナソニック『レッツノートQV』新製品発表会」を開催。同社コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部の坂元寛明事業部長と上田大プロジェクトリーダーが登壇し、QV8が登場した背景と特徴を語った。
(記事中の価格は全て税別)
まだまだ伸びる「テレワーク」と「モバイルノートPC」
昨今「働き方改革」という言葉を耳にすることが多い。推進役である厚生労働省の言葉を借りると、働き方改革とは「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」だ。
坂元事業部長は、「ワークプレイス(働く場所)」「ICT利活用促進」「人事制度」「業務プロセス」の4点における改革を通して、「日本で美徳とされてきた長時間労働」から「効率的な働き方」を重視する姿勢に切り替えていくことが重要だと語る。
特に、ワークプレイスとICT利活用促進は、この改革を成功に導く上で特に重要だという。「どこでも働ける」ことが、人々の意識を変える上で重要であるという考えだ。
どこでも働ける方法として注目を集めているのがPCやスマートフォン、タブレットを使って遠隔地から業務を行う「テレワーク」だ。総務省の「平成30年度通信動向調査」(PDF形式)によると、調査対象の企業の約19.1%が何らかの形でテレワーク制度を導入しており、その比率は年を追うごとに増加傾向にはある。
しかし、テレワークで先行する米国では約85%、イギリスでも約38%の企業がテレワーク制度を導入している。それと比べると、日本におけるテレワークは「まだまだ」という状況ともいえる。
一方で、テレワークを支える1つの柱であるモバイルノートPCの売れ行きは堅調で、IDC Japanの調査では、2017年、2018年と2年連続で出荷台数は120万台を超えており、2019年も同規模の出荷が見込まれている。
この市場は、Let’s noteにとっての“主戦場”だ。坂元事業部長は「ユニークなハード(Let’s note)とサービスで働き方改革を後押ししたい」と語る。
QV8は「より薄く、より軽く、よりコンパクト」に
今回発表されたLet’s note QV8は、4コアCPUを搭載する12型ノートPCとしては世界最小で、「A4用紙よりもコンパクトでも高性能」「書類を見やすいアスペクト比3:2のディスプレイ」「頑丈なボディーに強固なセキュリティ」の3点にこだわって開発された。
ボディーサイズは約273(幅)×209.2(奥行き)×18.7(高さ)mmで、最軽量構成の本体重量は約969g(バッテリーパック込み)となっている。特筆すべきは設置面積で、「新幹線や飛行機の座席のテーブルで、横に飲み物を置ける」(坂元氏)ほどに小型化されている。
本体の小型化は、大きく「キーボードの実装方法の変更」と「液晶モジュールの最小化とはめ合わせ方の変更」によって実現している。
従来のLet’s noteでは、キーボードをトップキャビネットの“上側”に付けるような設計となっていた。これに対し、QV8のキーボードはトップキャビネットの“下側”からはめ込む設計とすることで、左右端の桟の幅を削減した。
また液晶モジュールのをカスタム設計とすることで通常よりもコンパクト化し、天板とのはめ合わせ方を変えることで左右の縁の幅を極小化した。
さらに、天板のボンネットを「逆ドーム型」とすることで薄型化も実現している。こうなると強度面で不安を覚えるが、ボディーの負荷が掛かる部分にピンポイント補強を施し、逆ドーム型ボンネットも同様にピンポイント補強することで従来のLet’s noteと同等の強度を確保している。
プロセッサは「Uプロセッサ」 放熱にも工夫
QV8は第8世代Coreプロセッサを搭載している。従来のLet’s noteでは、コンパクトモデルでは消費電力を抑えた「Yプロセッサ」を搭載する傾向にあったが、QV8では処理能力を優先してモバイル向けとしては一般的な「Uプロセッサ」を搭載している。ストレージに関しても、量販店モデルについては読み書き速度を優先してPCI Express接続のSSDを採用している。
CPUやSSDの処理パフォーマンスが上がるなると、放熱の問題が常につきまとう。この点については、新型の薄型CPUファンを投入し、ボディー内の放熱シミュレーションを繰り返して吸気・排気のフローを最適化することで解決している。
ディスプレイは2880×1920ピクセルのマルチタッチ対応12型液晶で、反射防止フィルムが付属する。アクティブペン(別売)による操作にも対応している。
レガシーポートもしっかり装備
昨今のコンパクトなノートPCでは省かれがちなポート類。しかし、QV8は通常のLet’s noteと同様に充実したポート類を備えている。
左側面には電源入力端子、HDMI出力端子、Thunderbolt 3端子、USB 3.0 Type-A端子、Ethernet(有線LAN)端子、アナログRGB出力(D-Sub)端子とイヤフォン/マイクコンボジャックを備えている。Thunderbolt 3端子はUSB 3.1 Type-C端子としてはもちろん、USB Power Delivery(USB PD)による電源入力やDisplayPort出力端子としても機能する。
右側面には、USB 3.0 Type-A端子×2とSDXCメモリーカードスロット(UHS-I/II対応)を備えている。
「変換ケーブルを持ち歩かなくても接続に困らない」(上田氏)Let’s noteの強みは健在だ。
モダンスタンバイに対応
QV8は、いわゆる「モダンスタンバイ」に対応している。
スリープからの復帰が早いだけではなく、スリープ中もWi-Fi(無線LAN)やモバイル通信(LTE/3G:LTEモジュール搭載モデルのみ)の接続を維持できるので、対応アプリと組み合わせることでデータを常に最新に保つことができる。スマートフォンのような使い方ができる便利な機能だ。
ただし、その性質上、モダンスタンバイは従来のスリープと比べると待機中の消費電力が大きくなる。しかし、SV8のモダンスタンバイは「無効にできない」とされている。この点には注意が必要だろう。
赤外線カメラも搭載 一部モデルには「アウトカメラ」も
Windows Helloの生体認証は「指紋」と「顔」に対応している。指紋センサーはパームレストの右上に、顔認証用の赤外線カメラユニットは画面上部に付いている。状況に応じて生体認証を使い分けられることが魅力だ。
Webカメラは約207万画素で、アレイ(指向性)マイクも備えているのでビデオ会議への参加も容易にこなせる。「不動産系のお客さまからの要望が多い」(担当者)ことから、法人向けモデルの一部には約800万画素のアウトカメラも搭載している。このアウトカメラはオートフォーカス(AF)対応でLEDライトも備えており、プリインストールのオリジナルカメラアプリを使うと文字(簡易OCR機能)やQRコードの読み取りもできる。
パナソニックでは、2019年度(2019年4月~2020年3月)のPC出荷台数目標を「100万台超」に設定している。Let’s note QV8がその一助となるかどうか、注目だ。