プレゼンテーション「NTTとトヨタ共同記者会見」

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NTTとトヨタ共同記者会見

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NTTに「渡りに船」だったトヨタ自動車との提携

トヨタの実験都市で基盤システムを共同構築
巨人同士のタッグが実現した。国内で通信業界最大手のNTTと自動車最大手のトヨタ自動車が3月24日、スマートシティ事業を軸にした資本業務提携を発表した。通信を活用した自動運転技術の開発でも協力する。

今回の提携と直結するのが、トヨタが今年1月、最新のテクノロジー見本市「CES 2020」で発表したスマートシティ構想「Woven City(ウーブン・シティ)」だ。早ければ2021年から、東富士工場(静岡県裾野市)の跡地で、あらゆるモノやサービスがIoT技術でつながる実験都市づくりに着手する。

ウーブン・シティでは人々が実際に暮らす街中で自動運転車の走行を計画している。その実現に欠かせないのが情報通信で、NTTの次世代通信規格5GやAI(人工知能)、情報集積や分析の技術を活用する。今回の提携を持ちかけたのはトヨタからで、豊田章男社長は「必然だった」と話す。国内の通信会社の中ではNTTがスマートシティのフロントランナーだからだ。

GAFAへの対抗心を示す
現在、あらゆるものがデジタル化し、グーグルなど海外の巨大プラットフォーマーがさまざまな分野で急速に力を増している。異業種からモビリティ分野の事業参入も相次いでおり、主導権争いが熾烈化している。実際、NTTの澤田純社長は提携会見で、「GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)への意識はある」と対抗心を示した。

トヨタの豊田社長は「車や住宅が先にあってそれをつなげていくという従来の発想から、上位概念は人々が暮らす街で、そこに車や住宅をつなげていく発想に転換する」と語った。街にいる人たちのさまざま情報を把握し、車の有効な活用方法を創出したり機能を高めたりする考え方だ。

両社はウーブン・シティにおける実証実験を行うほか、情報活用のコア基盤となるプラットフォームを共同で構築・運営する。今回、提携を持ちかけたのはトヨタが側からだったが、NTT側にとっても、それは「渡りに船」だった。

かつての収益柱だった固定通信事業は右肩下がり。次の収益柱として育てた移動通信のドコモも、スマートフォンの新規契約の一巡や競争激化で頭打ちの状況にある。新たな事業柱の育成を目指す中、積極的に力を入れている1つが都市づくりに情報通信技術を生かすスマートシティ事業だ。

スマートシティ事業の代表的なモデルは公共安全や交通管理に関わるシステムだ。例えば、街頭に設置した監視カメラや音声などを拾うセンサーから、人や車の動きなどの膨大なデータを収集する。それをAIで分析することで、あらかじめ混雑状況や事件発生を予測し、渋滞緩和や犯罪抑止につなげている。

国内では、札幌、千葉、横浜、福岡で情報通信を活用した街づくりの取り組みを展開しているほか、海外展開にも力を入れている。2018年12月には、海外の大型受注第1号としてアメリカのラスベガスにスマートシティのシステム提供が決まった。2019年春からシステムの本格提供を始めている。

2020年2月には、マレーシアでサイバージャヤ地区(情報通信技術産業の特別区)の交差点にカメラを設置し、車両数の監視や分析を行う実験をスタートさせた。これ以外にも、アメリカやアジアなど世界で70件超の商談が進んでいるという。

3月26日には地図大手ゼンリンの発行済み株式7%を取得し、業務提携をすることを発表した。両社の強みを持ち寄り、通信技術と地図情報を掛け合わせ、スマートシティ事業などに生かしていく方針だ。

スマートシティ事業で野心的な目標
NTTは海外のスマートシティ関連事業で2023年度までに10億ドル(1100億円)の売り上げを目指している。海外で複数の商談が進んでいるとはいえ、これはかなり野心的な目標だ。

NTTグループは長年、通信系を中心に国内を収益のメインにしてきた。近年は成長を求めてシステム系を軸に海外事業に注力しており、大型のM&Aも絡めて拡大を急ぐ。それでも、グループの売上高に占める海外比率は2019年3月期で2割にとどまる。

北米などでのNTTの知名度は決して高くはないため、グーグルやIBM、マイクロソフトなどに比べてネームバリューに劣る。そこで2019年シーズンからアメリカのインディカーレースの冠スポンサーになるなど、知名度引き上げに余念がない。

そうした中、世界的な知名度を持つトヨタと手を組んだ意味は大きい。今回の提携を生かして、海外のスマートシティ事業の商談拡大につなげられる可能性もあるからだ。また、事業面の期待もある。トヨタとの提携を通じて、自動車からより多くの移動情報の収集や分析ができれば、効率的な交通システムの設計や正確な渋滞予測など、スマートシティ事業のサービス展開にも生かせるからだ。

NTT関係者は「スマートシティ事業にどう生かせるかはモビリティから情報を取得してから。だが、(生データに基づいて)試行錯誤をできるようになることが大きい」と話す。トヨタに頼りにされた今回の好機をどれだけ生かせるか。大型提携の成果は、NTTの海外飛躍にとっても重要なカギを握っている。