BUSINESS INSIDER
au経済圏、2021年度までに6兆円規模へ ── ブランド統一や「au PAY」スタートで示されるKDDIの本気
KDDIは2月12日、記者説明会を行い、スマートフォンを中心とした自社経済圏・金融事業の拡大を目指した「スマートマネー構想」を公表した。
同構想の立ち上げに際し、金融関連事業をまとめた新会社「auフィナンシャルホールディングス」の設立、関連会社「じぶん銀行」の子会社化、ネット証券の「カブドットコム証券」の関連会社化も新たに発表した。
現在、KDDIの決済・金融事業の流通総額は約2.46兆円。そのうち、プリペイド決済の「au WALLET決済」と通信料金合算支払いの「au かんたん決済」の規模は約1.91兆円(いずれも2018年度通期予想)。これにじぶん銀行の流通額も加えると「約4兆円規模」(KDDI広報)とのこと。
KDDIの髙橋誠社長は、スマートマネー構想全体のシナジーにより2021年度までには「決済・金融取扱高6兆円を目指す」と話している。
複数の金融サービスをauブランドに統一
今回発表になったスマートマネー構想の肝はなんといっても、4月1日に設立するauフィナンシャルホールディングスだ。
KDDIは今までも通信料金合算支払いに限らず、電子マネー「WebMoney」やau WALLETやじぶん銀行、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの金融事業をそれぞれの子会社や関連会社で展開してきたが、それぞれの会社名・ブランド名をauブランドに統一し、auフィナンシャルホールディングス傘下に集約する。
・じぶん銀行(銀行)→auじぶん銀行
・KDDIフィナンシャルサービス(決済)→auフィナンシャルサービス
・ウェブマネー(決済)→au PAY
・KDDIアセットマネジメント(投資運用)→auアセットマネジメント
・KDDI Reinsurance Corporation(再保険)→au Reinsurance Corporation
また、現時点で持ち株比率としては関連会社となるため、auフィナンシャルホールディングスの傘下ではないが、損害保険を提供する「au損保」、カブドットコム証券改め「auカブコム証券」もスマートマネー構想に含まれる。
では、スマートマネー構想とは何か。それは、スマートフォンなどの通信、光回線などの固定通信、電気といったインフラで発生する利用料とポイント、ネットやリアルで使えるモバイル決済、預貯金や投資、保険などの金融事業をすべてスマートフォン中心のサービスとして展開することだ。
なお、今までau WALLETやiDeCoなどの決済・金融サービスはau IDに紐付いており、au回線の契約が必須となっているが、KDDIは経済圏の拡大や加盟店メリットを省みて、これらのサービスのキャリアフリー化を2019年夏頃に実施する。
後発感あるKDDIだが、髙橋氏「そんなに遅れていない」
このような複数のインフラ・金融事業をまとめる経済圏の創出は、すでに楽天やLINEなどが展開している構造と似ているように思える(ただし、LINEの銀行業は許認可の準備中の段階)。
また、通信事業者系決済という意味ではソフトバンクとヤフーの合弁会社である「PayPay」や、NTTドコモの「d払い」が2018年より展開中。通信と決済の融合が進む昨今、KDDIのスマートマネー構想はやや後発感が拭えない。
これに対し、髙橋社長は「支払い元となるウォレットをどこのOver The Top(通信事業者以外のインターネットサービス)のプレイヤーで貯めることができるのかで、QRコードの是非は決まってくるのではないか」と指摘した上で、同社が抱える約2000万人のau WALLETの会員、さらにはその中にある1000億円規模という残高(au WALLET残高とWALLETポイントの合算)の大きさに触れた。
髙橋社長は「正直、QRコード(の決済サービス)は始まっているが、そんなに多くのトランザクションは起きていない。そんなに遅れていない」と自信をあらわにしている。
au PAYは2019年度早々に100万カ所で利用可能に
そんなスマートマネー構想の中で重要な役割を果たすのが、4月から開始予定のスマートフォン決済「au PAY」だ。au PAYは、au WALLETで展開するApple Pay(QUICPay+)やMastercardブランドのプリペイドカードではカバーできない、中小規模店舗向けの支払い手段だ。
詳細はまだ明らかになってないが、2018年11月には楽天の「楽天ペイ」(コード決済)の加盟店舗でもau PAYが利用できるようになるとアナウンスされている。
また、スマートマネー構想の発表と同時に、カカクコムが運営するグルメサイト「食べログ」とau PAYの連携も発表。食べログ上でau PAYが使える店の紹介やポイント還元施策の実施に加え、KDDIの持つ属性データとカカクコムの持つ消費行動のデータを掛け合わせたビッグデータ分析も実施していく。
加盟店開拓でも食べログの持つ店舗データを積極的に活用していく方針で、髙橋社長は2019年度早々に100万カ所以上(楽天ペイのコード決済加盟店なども含む)でau PAYが利用できるようになると明かしている。