プレゼンテーション「KDDIとローソン、スマホ決済で提携 ポイントはポンタに統一」

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KDDIとローソン、スマホ決済で提携 ポイントはポンタに統一

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モバイル決済競争の終り。ローソン×KDDI提携と次のステージ

既報の通り、KDDIとローソンは12月16日、両社の顧客基盤の融合と将来的な技術/サービス開発を主眼とした資本業務提携を発表した。目先の動きでは、KDDIが自身の持つ「au WALLETポイント」を2020年5月以降はローソンらが展開するポイントプログラム「Ponta(ポンタ)」に統合し、互いのID連携を推進する。両社によれば、会員基盤にして1億、モバイル会員数では2,200万、年間ポイント付与額にして2,000億超の巨大連合となる。

モバイル決済分野では競合他社の後塵を拝するともいわれる2社だが、今回の提携は単なるその巻き返しにはとどまらない、もう少し先をにらんだ動きが背景にあると考えている。

すでに終了しているモバイル決済競争
スマートフォンのアプリを使ったモバイル決済の世界だが、2017年にQRコード(バーコード)方式を使ったサービスをLINE PayやOrigami Payが開始して以降、2018年末のPayPay参入で競争が激化し、今年2019年の現在に至る。もともと今年10月1日にスタートした経済産業省のポイント還元事業に合わせた各社のサービスインと乱立状態だったが、「どのサービスがモバイル決済の世界で主役になるのか」という点では、すでに状況は収束しつつある。

先日のヤフーとLINEの経営統合が象徴的だが、圧倒的営業力を持つソフトバンク陣営のPayPayとの加盟店開拓での直接競合を避け、「あくまで会員基盤における利便性を追求する」という方向で残りの事業者はまとまりつつある。Mobile Payment Alliance(MoPA)の解散も、「PayPay対抗」という軸で残りの事業者が連携する意義を失ったことを意味している。

ゆえに、モバイル決済の世界の競争はすでに次のステージへと移っている。会員基盤を軸とした経済圏の拡大だ。ポイントプログラムが象徴的だが、いかに多くの会員を囲い込み、自身の経済圏の中で資金を循環させるのかという点が重要となる。

ポイントプログラムはモバイル決済登場よりはるか昔から存在する概念であり、地方の小さなスーパーでさえロイヤリティプログラムの一環としてポイント発行を行なってきた。スタンプカードなども含めれば小売の世界では定番の顧客獲得手段であり、今後はいかにポイントプログラムをモバイル決済に絡めて顧客を獲得していくかという競争が激化する。

日本におけるスマートフォン普及率が人口のそれに近付くにつれ、モバイルを使ったマーケティングの比重はより高くなる。PayPayが「スーパーアプリ」を標榜してPayPayアプリの機能強化を重視しているのも、将来的にこれら日本国内に数多存在するポイントプログラムの仕組みを取り込んでいこうとする戦略の1つなのだと筆者は考える。

「ポイントプログラム+モバイル決済」という視点でこの業界を見たとき、この分野で現在圧倒的優位にあるのが「楽天」だ。以前に楽天ペイメント社長の中村晃一氏にインタビューした際に(参考記事)、同社は「楽天ペイ」という決済単体で事業を見ておらず、楽天が発行する「楽天ポイント」と「楽天カード」を交えた金融サービス全体でビジネスを考えており、「楽天ペイアプリ」はそれらサービスをモバイル端末から利用するための窓口として扱っている。

中村氏は楽天ポイントについて「業界最大のポイントプログラム」と豪語する。また、楽天カードの取扱高も一説によれば日本のカード全体の3-4割の水準に達するといわれており、同社自身が「業界No.1カード」とアピールする裏付けにもなっている。また楽天のオンライン事業は業界最大手であり、近年リアル店舗での楽天ポイント連携が進んでいることを考慮すれば、モバイル決済の次のステージをにらんだ下準備はすでに済んでおり、かなり優位に競合との競争に立ち向かえる立場にあることがわかる。

推測ではあるが、ヤフーとLINEの経営統合もまた、こうした国内での強力なライバルの存在をにらんでの動きといえるかもしれない。

なぜローソンの提携相手がKDDIなのか
ここで話題は冒頭の「2社の提携」というテーマに戻る。「au WALLETポイント」「au ID」の名称でポイントプログラムやIDを発行するKDDIだが、基本的には「au会員」向けのサービスとなっている。au IDオープン化の話題はたびたびあったが(現在はauユーザーでなくてもID登録できる)、主軸はあくまでKDDIグループの経済圏で資金を循環させてさらなるサービス利用を促すための仕組みだと筆者は考える。

その場合、会員の最大数はauの契約数である5,000万-6,000万ということになるが、重複契約やアクティブ率を考慮すれば、実際にはその3-4割程度だ。「モバイル会員数では2,200万」という数字があったが、これがau WALLETポイントを軸とした経済圏のほぼ上限となる。

もし経済圏をさらに拡大させたいと考えた場合、KDDIが現在持っていない顧客層との連携が図りやすい相手、すなわちリアル店舗の接点を持つコンビニ業界というのは提携に適した相手だ。ローソン側のスタンスとして、「KDDI側が合流してきた」というニュアンスを伝えていたが、実際にそういう流れなのだろう。

「ポイント経済圏」でみた場合の提携の流れはこうなるが、より興味深いのは「ローソンが提携に何を見ているか」という部分だ。7payやファミペイといった形でライバルがモバイル決済の世界に参入するなか、あくまで静観の構えを見せていたローソン。一方で、次世代店舗作りや労働人口不足時代をにらんだ無人運営実験など、各種の取り組みは業界でも最も進んでいると思われる。

昨今の状況を考えれば、あえてモバイル決済の競争に参加しなかったことは先見の明があるともいえるが、なぜいまこのタイミングで、しかも提携相手がKDDIなのだろうか?

ローソン側の説明によれば、両社の提携には1年程度の話し合いの場がもたれたという。その中で、次世代の技術やサービス開発の“携帯キャリア”のパートナーとしてKDDIが選ばれた。

ローソンはポイントプログラム連携ではもともとNTTドコモと連携しており、同店舗でdポイントが利用できる。順当にいけばNTTドコモが最適な相手だろう。だがある関係者の話によれば、ファミリーマートがポイント提携拡大の一環としてパートナーの1つにdポイントを選んだことに関し、ローソン側がNTTドコモにかねてから不満を抱いていたという。

両社のポイント提携開始は今年11月だが、この構想自体はローソンとKDDIの話し合いがスタートした1年前の時点ではすでにローソン側に伝わっていたという話があり、これがKDDIをパートナーとして迎える動きを加速させた可能性が考えられる。今後、ローソンを舞台にした興味深いサービスの数々はKDDIをパートナーとして発表される可能性が高く、ポイント連携を巡る各社の綱引きは「どの相手と戦略的に組んでいくか」という流れへと進んでいく。